ウクライナ情勢や米中対立など、地政学リスクへの警戒感から、経済への悪影響が想定される。第一に、地政学リスクの高まりによるエネルギー在庫の積み増しは、需給の逼迫要因となる。23年はエネルギー需要の高めの伸びが想定される一方で、供給拡大余地は限定的だ。第二に、経済安全保障の強化だ。米国は自国の技術力強化に大規模な予算を投じるほか、台湾や韓国など他国も巻き込んで中国への先端技術の流出を阻止する方針だ。世界経済の分断に発展する可能性は低いものの、先端技術や重要物資に限定されるかたちで、既存のサプライチェーンの修正が進むだろう。
24年にかけての世界経済のリスクは3つある。いずれも発生確率は相対的に低いものの、発生すれば世界経済の成長率を大きく押し下げかねない。第一に、インフレ抑制の難航による金融引き締めの長期化、第二に、中国不動産業界の不良債権問題悪化による中国経済の成長失速、第三に、地政学的対立のエスカレートによる世界経済の分断である。