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2019年5月号 経営コンサルティング

残業上限と有休義務化を企業変革につなげるには

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2019.5.1

地域創生事業本部大橋 麻奈

経営コンサルティング

POINT

  • 労基法改正への対応は労務担当に任せきりにすべきではない。
  • 経営陣が取り組むべき課題であり、法順守と成長継続の両立は可能。
  • 戦略的な人員・資本の配置と選別受注を中心に経営課題の解決を。  
改正労働基準法の2019年4月施行を受け、残業時間の上限が新設されるとともに、年次有給休暇の取得も義務づけられた*1。働き方改革によって従業員の労働時間や出勤日数が制限される中で、特に労働集約型の企業が同法の順守と持続的な成長とを両立させるのは、かなり困難にも見える。

企業が労基法による規制への対応を、人事部などの労務担当に任せきりにしたままでは、この難題は解決できないだろう。今回の法改正を、経営陣が本腰を入れて仕事の進め方や組織、風土を抜本的に改革する契機と捉える必要があるのではないか。

鍵となるのは、対内的には人員や資本の戦略的な配置、対外的には選別受注であろう。経営陣は事業構造のあり方や需給予測などを長期的に見据えて、こうした措置を講じる必要がある。並行して業務の効率化や最新技術の活用などにも目配りし、経営課題の解決を目指すべきだ(図)。

戦略的配置の事例として、クレディセゾンが2017年9月に着手した「全員正社員化」が挙げられる。アルバイトを除き、同社で働く全員を正社員とする一方、期待する役割や行動に応じ等級と処遇を定めて評価する制度を導入した。年齢や経歴にかかわらず全員に同じ評価基準を適用することで、意欲や能力のある社員が活躍できる体制を築くとしている。経営陣は、賃金や処遇を正社員に合わせることに伴う短期的なコスト増よりも、組織全体の活力向上による長期的な成長を優先したといえる。

選別受注では、九州の建設会社の例が参考になる。同社は顧客に対し、突発的な残業依頼などには応じないと文書で表明、この申し入れを受け入れない先とは契約しない方針を決めた。受注予測や自社への評価のほか、ハードな業務が続けば若手が定着しない実情を踏まえ、顧客に強く出ることを経営者が判断したという。

戦略的配置と選別受注は密接に関連し合っている。顧客の選別によって無理な案件を回避できてこそ、戦略的配置も可能になるからだ。経営陣は自社を取り巻く環境と今後の成長戦略を踏まえた上で、企業変革に取り組むべきだろう。
[図]改正労基法施行に伴う経営課題解決のあり方

*1:法定時間外労働の上限を年720時間(一部例外として960時間)に設定。有給休暇が年10日以上ある全労働者に最低でも5日取得させるよう、使用者に義務づけた。

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