マンスリーレビュー

2019年5月号トピックス2経済・社会・技術

多様なワーケーションを推進しよう

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2019.5.1

オープンイノベーションセンター笠田 伸樹

経済・社会・技術

POINT

  • 欧米で始まったワーケーションが国内企業でも普及の兆し。
  • 柔軟な働き方が可能に。イノベーション創出の場としても最適。
  • 関係者の多様なニーズに合わせたプログラム開発を目指そう。 
新しい働き方の形態「ワーケーション」が注目されている。もともとは欧米で始まったもので、ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語である。最近では日本企業による導入も進み始めている※1。社員が旅行先や帰省先でも仕事ができるという柔軟な働き方の一つとして導入されるケースが多い。例えば、日本航空は2017年にワークスタイル変革の一環としてテレワーク制度を活用したワーケーションを導入した。その結果、長期休暇が取りやすくなる傾向がみられており※2、有給休暇取得率を改善させ、健康経営を実践する上での効果は確かに大きい。

だが、仕事と休暇の関係は企業や社員によって、とらえ方がさまざまである。ワーケーションにも多様な選択肢が用意されるべきだろう。一例として、仕事に比重を置いたワーケーションの特徴を示した(図)。リラックスしやすい非日常的空間に身を置けば、新たなアイデアやイノベーションを創出するモチベーションは高まる。自然豊かな観光地に自社、他社を問わずさまざまな企業の社員が集まって、チームビルディング、オープンイノベーションなどの体験要素を取り入れることで、中堅・若手社員の育成、成長を促す絶好の契機にもなるだろう。

ワーケーションの導入によりイノベーション創出や若手育成に積極的な企業であることをPRできれば、人手不足問題が深刻化する中、新卒採用や国際人材の獲得に向けたイメージアップにもつながる。一方で、ワーケーションの候補地となる観光地の多くは地方にある。これらの地域では、高齢化や若者の流出による人口減少や人手不足をはじめとするさまざまな課題を抱えている。地方にとっても、ワーケーションをきっかけに観光以上移住未満の「関係人口」※3を増やす、副次的効果にも期待できる。今後、ワーケーションを普及・定着させるには、企業や自治体など関係者のニーズに合わせて、さらに多様なプログラム開発が必要だろう。当社でも「未来共創イノベーションネットワーク(INCF)」※4において、大分県別府市のイノベーション創出型ワーケーションの実証を支援している。さらなる普及・定着に期待したい。

※1:環境整備の面でも、三菱地所が和歌山県南紀白浜でワーケーションオフィスを開設するなどの動きもみられる。

※2:http://www.jal.com/ja/csr/pdf/2018summer_p14-15、2019年4月閲覧

※3:総務省の定義では、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる者のことを指す。
http://www.soumu.go.jp/kankeijinkou/、2019年4月閲覧

※4:「未来共創イノベーションネットワーク(INCF)」は2017年4月に設立された。ワーケーション普及推進に向けて、大分県別府市をフィールドにインバウンド・観光テックをテーマにした「イノベーション創出型ワーケーション」の実証プログラムを産・官・ベンチャーの会員メンバーと検討している。

[図]仕事重視型のワーケーションの特徴(休暇重視型ワーケーションとの比較)