マンスリーレビュー

2021年9月号トピックス1情報通信テクノロジー

新技術「HAPS」による6G時代のユースケース拡張

2021.9.1

フロンティア・テクノロジー本部鞆田 健

情報通信

POINT

  • 人口減少社会においては非地上系ネットワーク(NTN)の必要性が増す。
  • NTNの一要素であるHAPSは空中も含む広範な通信エリアを提供する。
  • HAPSの通信エリア拡張を活かしたユースケース創出を期待する。

維持能力向上が求められる次世代通信網

日本は今後、さらなる人口減少社会に直面することが確実視されている。無居住地域が拡大するとともに、過疎化地域においてはインフラを維持するための住民一人あたりコストも上昇することが予想されている。

これに加え、近年の災害の激甚化により、インフラ寸断も頻発している。このような状況において高度情報化社会の命綱である通信インフラの維持能力も改めて問い直されている。

そうした中、追加的な通信網の展開手段として、非地上系ネットワーク(NTN)の構築への期待が高まっている。

成層圏から通信エリアを提供するHAPS

NTNを構成する要素の一つに、高度20km程度の成層圏を長時間滞空するHAPS(高高度疑似衛星)がある。NTNには人工衛星などによる通信網の提供も含まれるが、HAPSは人工衛星と地上ネットワークの特徴をバランスよく有していると言える。通信の伝送遅延を抑えつつ、これまで地上ネットワークでは通信が提供されてこなかった海、空などへ広範囲の通信エリアを提供することが可能になる。

HAPSは、通信のカバレッジ拡張を特徴の一つとする第6世代移動通信システム(6G)の実現手段の一つとしても位置づけられる。2019年にはHAPSに使用可能な周波数が国際的に追加特定された。HAPSの機体の開発や実証実験も世界各国で行われており、国際的な注目度も高い。

自然災害への対応や上空の活用に期待

自然災害が多く、その激甚化が顕著な日本においては、HAPSが地上ネットワークの脆弱(ぜいじゃく)性を補完する有効なソリューションとなる。災害発生時に地上ネットワークが寸断した際、HAPSが地上を介さずに被災地上空から通信を行うことによって、被災地の通信網を早期に復旧することが可能になる。

また、人口減少社会における物流・人流の手段として期待される無人航空機や空飛ぶクルマは、今後ますます多数かつ広範囲にわたる利用が求められてくる。このような上空利用に対して、主に地表面上の端末との通信を想定した地上ネットワークのみにより通信を提供し続けることは限界がある。

一方、HAPSは20kmの上空から通信エリアを提供するため、空飛ぶクルマのように、多様な高度で運用されるユーザーへの適切な通信環境の提供が可能となる。

通信エリア拡張を活かしユースケース拡大を

これまで地上で平面的に展開してきた通信網の3次元的拡張は、人間の発想の転換を促すことに通じる。HAPSの真価は現状顕在化している社会課題の解決策のみならず、新たな通信のユースケースの掘り起こしを誘起することにある。HAPSの活用により、上空や海上における人間の活動領域の拡大が加速化するだろう。

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