「企業がレジリエンスを発揮する」ことは、短期的な時間軸の中で生じる外的なショックから事業を立ち直らせることに限定されるものではない。長期的な時間軸上でストレスを吸収するための組織的な能力を含むものと捉えている。
当社の考えるコーポレート・レジリエンスの向上とは、突発的、急速、持続的な三様のストレスへの対応を包含する。異なるフェーズのそれぞれに対して適切な対策を講じる段階的な取り組みを通して、企業の防護基盤と同時に価値創造基盤の形成を目指し、企業のレジリエンスのレベルを高めていくものと整理している。
コーポレート・レジリエンスのフェーズによって、企業が強化対象とするマネジメント基盤の要素は異なってくる。
例えば、「経営の関与に基づく企業スタンスの構築と浸透」「ステークホルダー・エンゲージメントの推進」「レピュテーションの評価」「インシデントの管理と分析」「学習と改善への組織的な取り組みプロセスの強化」といったマネジメント・システムは、全てのフェーズへの共通の基盤強化の取り組み要素として挙げられよう。
一方で、「リスクモニタリングの実践や危機管理体制の構築・強化」「オペレーショナル・レジリエンスの獲得」「デジタル化の推進とセキュリティ基盤の確保」「ダイバーシティ&インクルージョンの実現」「人事諸制度の改革」「パーパスの浸透と従業員エンゲージメントの向上に向けた取り組み」などは、企業が今、自らに求めるフェーズを見定めることによって、強化の取り組みの方向性がより明確になる施策となろう。
コーポレート・レジリエンスの向上により、優れた事業を生み出し持続するための優れた組織基盤の形成を目指す。この土台の上で、DX、人材マネジメント、国難級の災害への備え、サプライチェーン全体でソフトロー(時にハードロー)の潮流に応える姿勢といった、今日求められる主要成功要因(KSF)を取り込むことが、レジリエントかつサステナブルな企業を実現する近道ではないかと考える。
本コラムで述べた三様のストレスへ立ち向かうべく、当社はこれまでの
エンタープライズ・リスクマネジメントのコンサルティング実績から得た知見を結集させ、広く
コーポレート・レジリエンスの向上を支援していきたいと考えている。第2回以降では、外部極大ストレスに対するレジリエンスの発揮や、コーポレート・レジリエンス発揮の基盤となる要件、中長期的にコーポレート・レジリエンスを実現する組織像などについて理解を深めていきたい。