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内外経済見通し

2019~2021年度の内外経済見通し

新型肺炎の感染拡大により、減速強まる世界経済

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2020.2.18

株式会社三菱総合研究所

株式会社三菱総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:森崎孝)は、2019年10-12月期GDP速報の発表を受け、2019~2021年度の内外経済見通しを発表しました。

日本の実質成長率予測値:
2019年度+0.4%、2020年度+0.2%、2021年度+0.7%
(前回予測値(12月9日):2019年度+1.0%、2020年度+0.5%)

海外経済

米国は、既往の減税効果の剥落から消費は緩やかな減速を見込むが、米中第一段階の合意による輸出・生産の持ち直しや、緩和的な金融環境を背景に、潜在成長率(2%前後)程度の成長持続を予想する。

ユーロ圏は、世界経済減速による輸出・生産の悪化、雇用・所得の改善ペース鈍化による消費の減速を背景に、前年比+1%程度の低い成長にとどまる見込み。英国は、EUとの新たな通商協定に合意できず、移行期間も延長せずに20年末にEU単一市場から離脱するとみている。

新興国は、中国経済の減速が下振れ要因となり、緩やかな回復にとどまるだろう。中国は、米中合意により輸出環境が改善する一方、新型肺炎(COVID-19)の感染拡大に伴う消費・生産の停滞により、20年の成長率は▲0.3%ポイント下振れ、前年比+5.6%と19年(同+6.1%)から一段の成長減速を予測する。21年は本来の成長軌道に復することから同+5.7%を見込む。

日本経済

20年度は前年比+0.2%と予測する。消費税増税による家計負担に加え、新型肺炎の感染拡大による内外需の下振れが、20年半ばにかけて成長減速要因となる。ただし、19年12月に発表された経済対策が成長率を+0.3%ポイント程度押し上げ、日本経済は景気後退の瀬戸際で踏みとどまるだろう。21年度は、海外経済回復や消費税増税影響の一巡から、前年比+0.7%と緩やかな回復を見込む。

世界経済のリスク要因

世界経済の先行きは一段と不透明感が強まっている。注意すべき下振れリスクは次の四点である。
  1. 新型肺炎の影響長期化:新型肺炎は、①消費行動の変化、②企業活動の制約やサプライチェーンの寸断、③資産価格の下落を通じ、成長率の下振れ要因となる。終息までの期間が長期化し、中国経済の成長率が▲1%ポイント下振れすれば、世界経済の成長率は▲0.2%ポイント低下する。
  2. 中国のバブル崩壊:中国の民間企業債務はGDP比で200%を上回っており、日本のバブル崩壊前後と同水準にある。新型肺炎の感染拡大による経営環境の悪化が、中国企業の倒産を加速させる可能性がある。中国でバブルが崩壊した場合の不良債権処理コストはGDP比で日本の1.4倍に上るとみられ、信用収縮を通じて中国経済に急ブレーキがかかりかねない。
  3. 低金利下で蓄積する金融リスク:緩和的な金融環境が続く中、欧米でも信用力の低い企業向け貸出が拡大、投機的格付債券利回りの対国債スプレッドは低下している。世界経済の減速が強まれば、クレジットリスクへの警戒が一気に強まり、金融市場の不安定化を招く恐れがある。
  4. 中東情勢緊迫化:米国とイランは、全面的な戦争は双方自重しているが緊迫した状況にある。有事に発展すれば、原油の供給制約や価格上昇を通じて世界経済に影響が及ぶであろう。

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