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内外経済見通し

ウィズコロナ下での世界・日本経済の展望|2021年2月

2020~2022年度の内外経済見通し

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2021.2.16

株式会社三菱総合研究所

株式会社三菱総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:森崎孝)は、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大を踏まえ、経済対策提言や世界・日本経済の見通しを随時発表してまいりました。今回は2月半ばまでの世界経済・政治の状況、および日本の2020年10-12月期GDP速報の公表を踏まえ、世界・日本経済見通しの最新版を公表いたします。
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世界経済

世界経済の回復ペースは鈍化している。20年10月以降、新型コロナウイルスの感染拡大ペースが再加速し、欧米を中心に外出行動の抑制度が再び強まった。第一波(20年4-5月)ほどの落ち込みは回避するものの、21年1-3月期は欧州や日本などでマイナス成長に陥る公算だ。

21年は感染拡大が続くなかで財政・金融政策に支えられた回復を見込むが、22年はワクチン普及などから経済活動正常化の動きが先進国中心に広がり、徐々に自律的な回復へとシフトするだろう。

22年までの世界経済を展望する上での注目点は、次の3点である。

第一に、集団免疫達成による経済活動正常化の時期である。20年末から各国でワクチン接種が始まった。人口の70-90%が抗体を有する「集団免疫」を達成すれば感染は終息に向かうとされ、経済活動の正常化も可能となる。今後のワクチン接種ペースや抗体の持続期間などにも左右されるが、接種ペースが早い米国と英国では21年末~22年前半に集団免疫を獲得する可能性がある。

第二に、財政・金融政策の行方である。コロナ危機対応として各国が実施する拡張的な財政政策および緩和的な金融政策は、21年は基本的に継続されるとみるが、22年には経済活動の正常化とともに段階的に調整が始まる可能性がある。特にFRBが、市場の予想よりも早く金融政策の調整に動いた場合は、金利上昇や米国株安を通じて世界経済の回復の重しとなる。

第三に、米国新政権の政策運営である。上下院とも民主党が制したことから、バイデン大統領の公約の実現可能性が高まった。コロナ危機からの経済立て直しを最優先に進めるとみられ、米国のGDPがコロナ危機前の水準を回復する時期は21年半ばに前倒しされよう。国際協調路線への回帰や、政策の予見可能性の高まりは世界経済の安定にも資するだろう。一方、課題はコロナ危機などを経て深まった国内分断への対応であり、格差が固定化すれば政治・経済の不安定化要因となる。

これらを踏まえ、世界経済の実質GDP成長率は、21年が前年比+4.6%(前回11月見通しから+0.5%ポイント上方修正)、22年が同+3.9%と予測する。実質GDP水準がコロナ危機前(19年末)を回復するのは、21年半ばと予測する。

先行きのリスクは、まず、防疫のための強力な経済活動抑制の継続である。毒性や感染力の強い変異株の流行や、重大なワクチン副反応の発生などにより、21年4-6月期以降も世界で強力な経済活動の抑制が続けば、世界経済の実質GDP成長率は、21年は同+3.0%、22年は同+2.5%といずれも大幅な下振れとなろう。コロナ危機前のGDP水準を回復する時期は22年半ばに後ずれする。

また、財政・金融政策の副作用にも注意が必要だ。大規模な流動性供給により金融危機は回避されている一方で、将来の経済的負担を拡大させかねない側面を併せ持つ。具体的には、企業の新陳代謝の遅れによる不良債権処理コストの増大、株価や不動産価格の上昇の反動による逆資産効果の拡大、資産価格の過熱による金融政策の調整などである。さらに、米中間の選択的デカップリングが強まる可能性もある。香港や台湾を巡る対立の深まりなどが飛び火し、貿易や金融への規制が拡大・強化されれば、サプライチェーンの組み換えなど国際的な企業活動への打撃は大きい。

日本経済

日本経済は回復局面にあるが、21年1-3月期は緊急事態宣言の再発令などから一時的にマイナス成長となる見込み。緊急事態宣言解除後は、反動増に加え、GoToキャンペーン再開も想定され需要回復を見込むが、少なくとも21年中は感染拡大が継続するなかで一定の経済活動抑制を余儀なくされるだろう。22年は、ワクチンの普及などにより経済の自律的な回復力が高まってくるとみられ、財政面からの支援が段階的に縮小されるなかでも、潜在成長率並みのペースでの回復を見込む。

実質GDP成長率は、20年度が前年比▲5%程度の大幅マイナスとなった後、21年度は同+3%台後半、22年度は同+1%程度と予測する。コロナ危機前の水準(19年10-12月期)を回復するのは22年後半となろう。

米国経済

バイデン新政権は、外交面では、パリ協定復帰など国際協調路線に回帰する一方で、バイ・アメリカン法の強化など保護主義的な通商政策については継続する見込みだ。新型コロナの感染拡大が高水準で続くなかでも株高などを背景に米国経済は持ち直しているが、雇用の回復が遅れている。コロナ危機が長期化するなかで企業がデジタル化・自動化による労働代替を加速させている可能性があり、スキルのミスマッチによる失業長期化が懸念される。実質GDP成長率は、21年は前年からの反動増に加え、1.9兆ドルの追加経済対策により前年比+4%台前半と高い伸びを見込む。22年はワクチン普及などにより経済活動の正常化が見込まれるが、財政・金融政策による経済下支え効果の段階的縮小も同時に進むことから、同+3%台半ばの成長を予測する。

欧州経済

欧州では、変異株の感染が急拡大し、各国は20年10月以降に断続的にロックダウンを実施するなど防疫措置を強化している。欧州経済は21年1-3月期にかけて2四半期連続でマイナス成長となる可能性が高い。4-6月期以降は持ち直しを見込むが、欧州経済の落ち込みは他の先進国と比べても大きく、若年層を中心とする失業の長期化などにより、雇用・所得環境の回復が遅れる可能性に注意が必要だ。欧州5カ国の実質GDP成長率は、21年は前年の反動もあり前年比+5%台半ばの高い伸びを見込む。22年はワクチン普及などから経済活動の正常化が進み、同+2%台半ばの回復を予想する。コロナ危機前の水準を回復するのは22年後半となる見込み。

中国経済

中国では一部地域で再び感染が確認されているが、局所的な都市封鎖や市民の隔離、春節連休の帰省自粛により、全国的な感染拡大は回避している。20年10-12月期の実質GDPは前年比+6.5%と成長が前期より加速した。成長の中身としては、依然として公的投資や自動車の購入支援策に拠るところは大きいが、22年にかけては段階的に民間部門の自律的な回復へと移行していくとみている。経済が正常化するなか、政府は中国経済のアキレス腱ともいえる過剰債務(GDP比で300%近い水準)の調整を進めるとみられ、金融面でも公的支援を徐々に縮小していくだろう。実質GDP成長率は、21年は前年の反動もあり前年比+7%台後半の高い伸び、22年が同+5%台後半を予想する。

新興国経済

新興国では感染が総じて拡大傾向にあるが、欧米先進国の金融緩和の影響から、国際金融市場における新興国からの資金流出圧力は引き続き落ち着いている。新興国経済は、中国向け輸出の回復などを背景に、22年にかけて成長回復を見込む。ただし、米国の景気回復により、FRBが量的金融緩和策の縮小に動く可能性が高まれば、新興国からの資金流出圧力が再び強まる可能性に要注意だ。また、ワクチン普及の遅れによる経済活動抑制の長期化も懸念される。

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