世界経済の回復ペースは鈍化している。20年10月以降、新型コロナウイルスの感染拡大ペースが再加速し、欧米を中心に外出行動の抑制度が再び強まった。第一波(20年4-5月)ほどの落ち込みは回避するものの、21年1-3月期は欧州や日本などでマイナス成長に陥る公算だ。
21年は感染拡大が続くなかで財政・金融政策に支えられた回復を見込むが、22年はワクチン普及などから経済活動正常化の動きが先進国中心に広がり、徐々に自律的な回復へとシフトするだろう。
22年までの世界経済を展望する上での注目点は、次の3点である。
第一に、集団免疫達成による経済活動正常化の時期である。20年末から各国でワクチン接種が始まった。人口の70-90%が抗体を有する「集団免疫」を達成すれば感染は終息に向かうとされ、経済活動の正常化も可能となる。今後のワクチン接種ペースや抗体の持続期間などにも左右されるが、接種ペースが早い米国と英国では21年末~22年前半に集団免疫を獲得する可能性がある。
第二に、財政・金融政策の行方である。コロナ危機対応として各国が実施する拡張的な財政政策および緩和的な金融政策は、21年は基本的に継続されるとみるが、22年には経済活動の正常化とともに段階的に調整が始まる可能性がある。特にFRBが、市場の予想よりも早く金融政策の調整に動いた場合は、金利上昇や米国株安を通じて世界経済の回復の重しとなる。
第三に、米国新政権の政策運営である。上下院とも民主党が制したことから、バイデン大統領の公約の実現可能性が高まった。コロナ危機からの経済立て直しを最優先に進めるとみられ、米国のGDPがコロナ危機前の水準を回復する時期は21年半ばに前倒しされよう。国際協調路線への回帰や、政策の予見可能性の高まりは世界経済の安定にも資するだろう。一方、課題はコロナ危機などを経て深まった国内分断への対応であり、格差が固定化すれば政治・経済の不安定化要因となる。
これらを踏まえ、世界経済の実質GDP成長率は、21年が前年比+4.6%(前回11月見通しから+0.5%ポイント上方修正)、22年が同+3.9%と予測する。実質GDP水準がコロナ危機前(19年末)を回復するのは、21年半ばと予測する。
先行きのリスクは、まず、防疫のための強力な経済活動抑制の継続である。毒性や感染力の強い変異株の流行や、重大なワクチン副反応の発生などにより、21年4-6月期以降も世界で強力な経済活動の抑制が続けば、世界経済の実質GDP成長率は、21年は同+3.0%、22年は同+2.5%といずれも大幅な下振れとなろう。コロナ危機前のGDP水準を回復する時期は22年半ばに後ずれする。
また、財政・金融政策の副作用にも注意が必要だ。大規模な流動性供給により金融危機は回避されている一方で、将来の経済的負担を拡大させかねない側面を併せ持つ。具体的には、企業の新陳代謝の遅れによる不良債権処理コストの増大、株価や不動産価格の上昇の反動による逆資産効果の拡大、資産価格の過熱による金融政策の調整などである。さらに、米中間の選択的デカップリングが強まる可能性もある。香港や台湾を巡る対立の深まりなどが飛び火し、貿易や金融への規制が拡大・強化されれば、サプライチェーンの組み換えなど国際的な企業活動への打撃は大きい。