コロナ危機からの経済の回復は、国・地域ごとの感染状況や経済対策の違いを映じて、ばらつきが大きくなっている。21年1-3月期に成長が加速したのは米国だ。大型経済対策やワクチン普及などから内需が伸び、GDPの水準はコロナ危機前(19年10-12月)近くまで回復した。一方で、欧州と日本はマイナス成長となった。感染力が強い変異株の拡大もあり、防疫措置の強化を余儀なくされた。
21年の世界経済は、前年からの反動と財政・金融政策支援により高めの成長を見込む。22年は、政策効果の剥落から成長ペースは鈍化するものの、先進国中心とするワクチン普及などから、徐々に自律的な回復へとシフトするだろう。22年までの世界経済を展望する上での注目点は、次の3点である。
第一に、経済活動正常化の時期である。ワクチン接種ペースの速い米国・英国では、21年の夏頃にはワクチン接種と感染による免疫保有者が人口の7割以上に達する、いわゆる集団免疫の達成が見込まれる。変異株へのワクチンの有効性や副反応など不透明な点は多いが、現状のペースでワクチン接種が進めば、22年半ばには集団免疫を達成する国が世界の70%(GDP比)を超えてくるだろう。国・地域によるばらつきを伴いつつも、段階的に経済活動の正常化が進む局面に入る。
第二に、財政・金融政策の行方である。段階的に経済の自律的な回復力が高まるなかで、既往の大規模な財政・金融政策の段階的な見直しが予想される。特に米国は、21年半ばにGDPギャップがプラスに転じるとみられ、インフレ圧力や金利上昇への懸念が強い。財政・金融政策の軸足は、危機下の緊急支援から、中長期的な経済の安定的成長へと段階的にシフトさせていくことが必要となるだろう。
第三に、戦略物資の調達構造の見直しである。対中警戒を強める米政権は、半導体など4つの戦略物資についてサプライチェーンの見直しを進める。EUも、中国などへの輸入依存度が高い品目を特定した上で、蓄電池や原材料など戦略的に重要な分野で、官民協働で域内技術力の強化やサプライチェーンの多角化を図る。米欧以外の国も含め、経済安全保障上の重要な分野での調達構造見直しの動きが強まるだろう。
これらを踏まえ、世界経済の実質GDP成長率は、21年が前年比+5.6%(前回2月見通しから+1.0%ポイント上方修正)、22年が同+3.5%(同▲0.4%ポイント下方修正)と予測する。実質GDP水準がコロナ危機前(19年末)を回復するのは、21年半ばと予測する。
先行きのリスクは、第一に、ワクチンの効かない変異株の流行などによる強力な経済活動抑制の継続だ。第二に、財政・金融政策の副作用である。資産価格上昇やインフレが過度に進んだ場合、現在の市場の予想よりも金融政策の修正が早まり、資産価格の大幅調整や、金利上昇による債務負担増加などが想定される。第三に、米中間の対立軸の拡大である。中国が半導体サプライチェーンの要諦を握る台湾などへの関与を強めれば、米中間で地政学的な緊張が高まるおそれがあり、国際的な企業活動への打撃も大きい。