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内外経済見通し

ウィズコロナ下での世界・日本経済の展望|2021年8月

2021~2022年度の内外経済見通し

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2021.8.17

株式会社三菱総合研究所

株式会社三菱総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:森崎孝)は、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大を踏まえ、経済対策提言や世界・日本経済の見通しを随時発表してきました。今回は8月半ばまでの世界経済・政治の状況、および日本の2021年4-6月期GDP速報の公表を踏まえ、世界・日本経済見通しの最新版を公表します。
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世界経済

世界経済は、国や地域によるばらつきを伴いつつも、総じてコロナ危機による落ち込みから回復の動きを続けている。欧米先進国では、ワクチン普及による重症化率の抑制などから防疫措置の緩和が進んできたが、世界的に変異株が拡大しており一部の新興国では防疫措置の強化を余儀なくされている。また、部品・原材料の不足や価格上昇も世界経済の回復ペースを鈍らせる要素となっている。

21年後半から22年にかけての世界経済は、コロナ危機下での政策効果に支えられた回復から、自律的な回復へのシフトが本格化するだろう。既存のワクチンが効きにくい新たな変異株の発現などのリスクを除けば、基本的には大規模な防疫措置の必要性は段階的に低下していくだろう。そのうえで、コロナ危機からの世界経済の回復パスを展望するうえでの注目点は、次の3点である。

第一に、財政・金融政策の行方である。経済が回復に向かうなか、既往の財政・金融政策の段階的縮小が予想される。特に、コロナ危機前(19年10-12月)のGDP水準を回復した米国では、21年末にかけて金融政策の出口への議論が本格化するだろう。当社では22年前半に資産買入規模の縮小開始、23年に利上げを想定するが、FRBが掲げる雇用最大化と物価安定の目標の達成状況次第で、そのタイミングは前後しうる。コロナ危機下で進行した失業長期化や非労働力化の回復状況、インフレ圧力の持続性に注目だ。

第二に、ポストコロナの構造変化への対応である。コロナ危機は、デジタルトランスフォーメーションやカーボンニュートラル実現への流れが世界的に強まる契機となった。こうした潮流の変化に対し、起業、新規事業や人材への投資、異業種間の連携・買収など、企業や国が事業構造の前向きな転換を実現できるかが今後の成長力を左右する。

第三に、米中対立を踏まえたサプライチェーンの見直しである。米中間の貿易はコロナ危機下でも活発に行われる一方で、今後の対立先鋭化に備えた各種法整備が米中両国で着々と進んでいる。今後、その運用状況を注視しつつ、経済安全保障上の重要物資の調達構造を見直す動きが各国で強まるだろう。

これらを踏まえ、世界経済の実質GDP成長率は、21年が前年比+5.4%(前回5月見通しから▲0.2%ポイント下方修正)、22年が同+3.7%(同+0.2%ポイント上方修正)と予測する。

先行きのリスクは、第一に、金融市場の不安定化である。米国金融政策の出口への動きが早すぎれば米国金利の急上昇により株式市場や新興国市場などからの資金流出が加速、遅すぎれば資産バブルや過剰な投融資を招き、その後の深い調整を余儀なくされる。第二に、産業構造転換の遅れである。過度な財政・金融緩和の副作用として、企業や事業の新陳代謝が阻害された場合には中長期的な成長力が鈍化する。第三に、米中間の対立軸の拡大である。中国が半導体サプライチェーンのかなめとなる台湾などへの関与を強めれば、米中間で地政学的な緊張が高まる恐れがあり、国際的な企業活動への打撃も大きい。

日本経済

日本経済は、21年入り後、感染が拡大するなかで緊急事態宣言が断続的に発令されているものの、外出行動の抑制度は段階的に縮小しており、消費は回復傾向にある。日本のワクチン接種完了者比率は10月には人口比5割を超えるとみられ、引き続き3密回避など一定の防疫措置を講じつつも、21年末にかけて経済活動の再開が進むだろう。22年は、ワクチンの普及などにより経済活動が本格的に正常化に向かう。コロナ危機下で積み上がった貯蓄が消費に回ることもあり、潜在成長率を上回るペースでの回復を見込む。

実質GDP成長率は、21年度は同+3%台前半、22年度は同+2%台後半と予測する。コロナ危機前の水準(19年10-12月)を回復する時期は、22年前半となろう。

米国経済

米国経済は、21年入り後にコロナ危機からの回復ペースが加速しており、4-6月期のGDPはコロナ危機前の水準を上回った。21年後半以降は、ワクチン普及による経済活動の正常化とともに、コロナ危機下で積み上がった貯蓄(約2.6兆ドル)の一部が消費に回ることが期待され、21年の実質GDP成長率は前年比+6%台半ばの高成長を予測する。一方で、半導体や原材料などの供給不足による物価の上昇が、景気回復の重しとなる可能性がある。22年は、経済の自律的な回復力は高まるものの、財政・金融政策による経済下支え効果の段階的縮小が予想されることから、同+3%台後半への成長鈍化を予測する。なお、米国の金融政策は、21年後半に雇用回復が進み、大幅な物価上昇も一時的なものにとどまるという前提のもと、「22年前半に資産買入規模の縮小開始、23年に利上げ」を見込む。

欧州経済

欧州経済は、変異株が拡大するなかでも、ワクチンの普及とともに経済活動を再開する動きが広がり、4-6月期は3四半期ぶりのプラス成長となった。21年後半以降、短期的には半導体不足や資源価格上昇が景気回復の重しとなる可能性があるが、全体としては経済活動の再開や雇用・所得環境の持ち直しを背景に、欧州経済は回復傾向を維持する見込み。欧州5カ国の実質GDP成長率は、21年は前年の反動もあり、前年比+4%台後半の伸びを見込む。経済活動正常化の進展により、22年も同+4%台前半と高めの成長を予想する。コロナ危機前の水準を回復するのは22年半ばとなる見込み。

中国経済

中国経済は、好調な輸出を背景に製造業主導の景気回復が続いている。ただし、21年後半以降は中国経済の成長率鈍化を見込む。短期的には国際商品市況の高騰による交易条件の悪化が重しとなるためだ。鉄鉱石や石炭の輸入価格は年初比2倍程度上昇しており、国内の鉄鋼製品価格の上昇がインフラ投資の抑制要因となる。また、22年にかけては世界的に経済活動の正常化が進むとみられるが、それに伴い、コロナ危機下でのリモートワーク需要などで拡大した中国製電気製品などへの需要が剥落することから、中国からの財輸出の伸びは徐々に鈍化していくだろう。米中対立による戦略物資を中心とするサプライチェーンの見直しも逆風となる。実質GDP成長率は、21年は前年の反動もあり、前年比+8%台半ばの高い伸び、22年は潜在成長率見合いでの同+5%台半ばを予想する。

新興国経済

新興国では変異株流行による感染拡大から、ASEANなどでは厳格な外出規制の実施を余儀なくされており、新興国経済の成長率見通しは前回5月から総じて下方修正する。今後、新興国経済は、ワクチン普及などによる先進国経済の段階的な正常化を背景に輸出主導での成長回復を見込むが、22年にかけて米国金融政策の出口への動きが本格化するなかで、新興国からの資金流出圧力が過度に強まれば、インフレや通貨防衛のための利上げを強いられ、経済の回復ペースが鈍化する可能性がある。

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