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内外経済見通し

ポストコロナにおける日本企業の針路 ─デジタル・リアル融合による付加価値創出に向けて

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2021.8.12

株式会社三菱総合研究所

株式会社三菱総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:森崎孝)は、2020年7月14日に「ポストコロナの世界と日本」、10月19日に「目指すべきポストコロナ社会への提言」をリリース。目指すべきは「レジリエントで持続可能な社会」と位置づけ、その実現のため取り組むべきテーマを提言。本稿では、日本企業がポストコロナに向けて、社会経済の変化に対応した新たな需要創造を進める方向性についてとりまとめた。

ポストコロナにおける新たな需要創造

社会経済活動が新常態に移行していくなか、市民の暮らし方・働き方が変化するとともに、コミュニティや地球環境の持続可能性といった社会課題に対する認識が高まった。外食・旅行等の需要が制限される一方、自宅や地元で快適に過ごすための選りすぐり消費、地産地消や環境保護につながる消費などへのニーズが増大した。企業は、こうした社会経済の変化に対応した新たな需要創造を進めることが求められる。本稿では、デジタルサービスとリアルな商品・サービスとを連携させることを「デジタル・リアル融合」と称し、質の高いリアルな商品・サービスを有する多くの日本企業が、デジタル・リアル融合によって、新たな需要創造を実現するための提言をとりまとめた。

能動性・カスタマイズによるデジタル・リアル融合

新たな需要創造が期待されるのは、選りすぐり消費や社会課題解決につながる消費である。これまでインターネットに代表されるデジタルサービスは、汎用的な商品・サービスを「安価・手軽」に、人気のあるものを的確に「選択」する効用を発揮し、その普及は広く一巡している。新たな需要創造に向けては、消費者の価値観や社会意識に合致する「能動性」、一人ひとりの心身状態や行動に対応した「カスタマイズ」、これら2つの効用を高めるデジタルサービスを提供し、リアル需要につなげることがポイントとなる。

個社の枠を超えたエコシステム形成

融合サービスの提供は、個社でも可能であるが、複数社が連携したエコシステムを形成することで「能動性」や「カスタマイズ」の効用を強化できる。地域(多業種)、横(同業種)、縦(サプライチェーン)、それぞれの形態で複数社をつなげる3通りのエコシステムがあげられる。

エコシステム全体での顧客価値向上

エコシステム形成の意義は、個社の枠を超えた顧客価値の最大化である。顧客価値をどう向上できるか、エコシステム全体を俯瞰して仮説を立案、参加企業間で合意することが重要となる。その実現には、データを活用してデジタル・リアル融合サービスを立案・実装・改善するサイクルの構築が必要である。

デジタル・リアル融合による経済効果

三菱総合研究所が関西圏を対象に行った試算では、地域GDPが13%増加するとの結果を得た。一定の経済効果が期待され、企業がデジタル・リアル融合に取り組む意味は十分にあるといえる。

企業におけるデジタル・リアル融合に向けて

ポストコロナに向けて日本企業は、①自社の商品・サービスの価値を高める効用(能動性・カスタマイズ)を見極め、②顧客価値を最大化できるエコシステム(地域・横・縦)を形成し、③デジタル・リアル融合サービスを立案・実装・改善していくことで、社会経済の変化に対応した新たな需要創造を実現することが期待される。

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