米国トランプ政権下で貿易摩擦として表面化した米中対立は、コロナ危機と米国の政権交代を経て、多面的な対立へと発展している。バイデン政権は中国を「唯一の挑戦国」と位置づけ、前政権の強硬姿勢を引き継いだ格好だが、同盟国との連携強化など、中国へのアプローチには変化がみられる。
米中対立の渦は国際社会を巻き込みながら拡大している。米国輸出規制に端を発する世界的な半導体不足、台湾を巡る緊張の高まり、中国の輸出管理法施行など、グローバルなサプライチェーンの地政学的な脆弱性が明らかになってきた。経済安全保障上のリスクに備える動きは、米中以外の国々にも広がりがみられる。
中国としては米国など西側諸国の輸出管理強化をにらみ、ハイテク・サプライチェーンの内製化など自律的な成長力強化を喫緊の課題として取り組んでいる。また、対外的には、一帯一路圏の国々を中心に、貿易・投資・融資を通じた経済的な関与を強めるとともに、先端技術分野でも中国が存在感を高めている。中国への経済的依存度が高まることで、これらの国々に対する中国の政治的な影響力も強まる可能性がある。
米中相互の経済依存関係は深いことから、短期的に経済圏の分断が進む可能性は低いものの、先端技術が絡む一部の分野では、企業の投資先変化などを通じて、中長期的にサプライチェーンなどの選択的な分断が進む可能性が高い。サプライチェーンの複線化や技術開発拠点の見直しなどを戦略的に進めることが重要になる。