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政策提言サステナビリティ

テクノロジーと協調で拓くわが国の循環経済

プラスチックと蓄電池の資源循環未来像

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2023.7.5

株式会社三菱総合研究所

サステナビリティ
株式会社三菱総合研究所(代表取締役社長:籔田健二)は、カーボンニュートラルや経済安全保障なども考慮した上で、わが国の循環経済・資源循環の方向性と、そこに向かう推進力となる対策(技術と協調の掛け合わせ)を提言します。

循環経済への移行に向けて

リニアエコノミー(線形経済)から、サーキュラーエコノミー(循環経済)への移行は、資源制約への対応や、さまざまな環境問題の改善・解決策としてだけでなく、資源循環や再生可能資源利用により、できるだけ枯渇性資源を利用せずに持続・成長していく経済システムを目指すものである。

循環経済の根幹をなす資源循環を考える際、そのループの過程で、輸出や、退蔵、環境流出、品質低下などに伴う資源ロスが発生するため、不足する分のバージン資源(一次資源)を新たに投入する必要がある。また、2050年のカーボンニュートラル(CN)実現という制約が加わり、循環の各プロセスでCNにつながる取り組みが求められている。さらに、ウクライナ問題を契機に、経済安全保障の観点から、循環利用によって資源を確保することの重要性が高まっている。

このような制約条件、社会的要請がある中、どのような資源循環をめざすべきかは、資源を個別に分析しなければ見えてこない。当社では国内で活用する主要資源44品目 を対象に、基本属性と環境性、経済安全保障の観点から評価し、このうち国内需要が多く、内需比率も比較的高いプラスチックと、現時点の資源需要量は少ないが、外需比率が高く、自動車のEV化と連動して今後爆発的に需要が拡大する蓄電池資源(リチウム、ニッケル、コバルト)を対象に、資源循環未来像を研究し、わが国の循環経済への移行に向けた提言をとりまとめた。

わが国の循環経済への移行に向けた提言

  • 資源循環を基本とする循環経済への移行は、カーボンニュートラルと経済安全保障の両立を視野に入れて、新たなサプライチェーンを構築することである。
  • この実現のためには、技術と協調の掛け合わせ(資源循環に資する技術を活用し、関係者間の協調領域を拡大すること)で、循環資源の同質性と必要量、経済性を確保する必要がある
  • プラスチックの場合は、①設計共通化、②二次資源市場構築、③国産バイオマス活用が効果的。
  • 蓄電池の場合は、①低コストで効率的なリサイクル技術を開発し、協調策として、②回収リサイクルの制度・体制整備、③リサイクル事業の収益モデル確立、④情報流通体制の整備を進めていく必要がある。

プラスチックの資源循環未来像

2050年の石油化学連産品としてのプラスチックの国内製造ポテンシャルは100万トン程度と見込まれる。不足する分は輸入に頼る必要があるが、プラスチック需要は現状の4億トンが10億トンになるとの推計がある中、十分に確保できない可能性がある。したがって、3Rの徹底やバイオマス由来原料利用の最大化により、化石資源由来樹脂の製造・輸入量を削減することが必要である。その具体的方策として、以下の3つの「技術と協調の掛け合わせ」が効果的である。

①設計共通化(モノマテリアル化×設計ガイドライン)

  • リサイクル手法に合致した加工技術(モノマテリアル化等)を利用する設計ガイドラインを業界協調により作成、遵守することでリサイクルの可能性を拡大

②二次資源市場構築(情報共有技術×仕様表記共通化)

  • 業界横断の協調により、廃プラスチックやその原料化した二次資源の情報を供給者と需要家が共有できる二次資源市場を構築・運用し、需給マッチング機会を拡大

③国産バイオマス活用(バイオナフサ製造技術×化学プラント活用)

  • 地域の林業と化学メーカーの協調・連携により、既存の化学プラントにて、国産バイオマス由来のバイオナフサを石化由来ナフサと混合することで、バイオマスプラスチックの供給を拡大
プラスチックの資源循環未来像のイメージ

蓄電池の資源循環未来像

蓄電池資源はこれから大きな需要の伸びが想定される資源であるが、IEAの予測でも、2040年時点でリチウムイオン電池に必要なコバルトやニッケル、銅などの総需要に占めるリサイクル供給の割合は1割以下にすぎない。しかし、一次原料に関しては資源ナショナリズムや環境負荷の大きさ、代替技術に関しては実用化に時間を要することなど、いずれも課題があるため、リサイクルが重要であると考える。

蓄電池のめざすべき資源循環は、自動車産業や蓄電池産業の将来シナリオによって異なるが、当社は国内に電池のサプライチェーンを残存させるシナリオが望ましいと考える。これを前提とした場合、近隣諸国のリサイクル産業に対して競争力を持つための①低コスト・高効率なリサイクル技術の開発が重要であり、並行して、協調領域の拡大・促進策として、②回収リサイクルの制度・体制整備、③リサイクル事業の収益モデル確立、④情報流通体制の整備を進めていく必要がある。

技術開発

  • リサイクル原料も近隣諸国との奪い合いとなることが予想されるため、①低コストで効率的なリサイクル技術を開発し、競争力を確保

協調領域拡大・促進策

  • 国内水平リサイクルへ優先的に廃電池が引き渡されるような②回収・リサイクルの制度・体制整備
  • リサイクルの価値を市場価値として内部化する③リサイクル事業の収益モデルの確立
  • 取引円滑化や処理工程の効率化、適正処理の確保に資する④情報流通体制の整備 
蓄電池の資源循環未来像のイメージ
欧州や米国が、それぞれ独自の資源確保戦略や、循環経済政策を打ち出し、グローバル企業が着々と循環産業への転換、二次資源のルート確立に向けて動いていく中、わが国では、国の指針や検討の場を活用しつつ、品目ごとに資源循環未来像やマイルトーンを関係者間で共有し、新技術の活用と関係者間の協調によって着実に新たなサプライチェーン・バリューチェーンを構築し、循環経済に移行していくことが必要である。

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