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2019年3月号トピックス3エネルギーサステナビリティ

「ポストFIT」の太陽光発電施設が行きつく先

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2019.3.1

地域創生事業本部山田 圭介

エネルギー

POINT

  • 再エネ電力を固定価格で買い取るFITの終了案件が今年から発生。
  • 事業用の太陽光発電施設の中古取引が本格化、査定も提案型へ。
  • 多様な買い手のもとで、きめ細かい実需を満たす存在に。 
再生可能エネルギーを一定価格で買い取るよう電力会社に義務付ける「固定価格買取制度(FIT)」の恩恵を受けてきた家庭用の太陽光発電設備が、2019年11月以降にFIT期間の終わりを迎え始める。2032年以降は大規模太陽光発電所(メガソーラー)などの事業用施設も同じく買取期間終了を迎え、固定価格での売電ができなくなる。

一方で国は、再生可能エネルギーを「主力電源」としていく目標を掲げている※1。買取期間終了を迎えた「ポストFIT」施設を手放す既存の事業者が増える中、太陽光発電への需要自体は拡大する。これに伴い、中古の事業用発電施設を取引する市場も本格的に立ち上がるだろう。

買い手としては、エネルギー供給構造高度化法によって非化石エネルギー※2比率を一定の水準まで高めるよう義務付けられた事業者や、事業運営を100%再エネで賄う目標を掲げたRE100加盟企業※3が考えられる。地域に根差した電源を確保したいと考える自治体や地元企業も手を挙げるだろう。

取引過程では、発電施設の査定(デューデリジェンス)を行った上で、用途に応じた改修などのリプレースを行うことが基本となる。買い手の顔ぶれが増え用途も多様になれば、デューデリジェンスのあり方も変わる。例えば、調整用電源として出力をリアルタイムで制御したい場合と、蓄電池と併用して災害時にライフラインを支える非常用電源として使いたい場合とでは、必要とされる設備の性能や特性は大きく異なる。現在は土木や法律の観点に基づいて機械的に行われている性格が強いデューデリジェンスも、買い手のニーズに応じた提案型へと進化する必要があるだろう(図)。

FITには固定価格買い取りを呼び水に、他業態からの太陽光発電事業への参入などを促進する効果があった。そしてポストFITの時代、太陽光発電施設も投資対象としての色彩を薄め、電力の実需を満たすという本来の役割を果たす存在へと戻っていくことになる。プレーヤーが異なる新たなビジネスのもとで、太陽光発電施設は各地の社会や産業のきめ細かいニーズに対応した、多様な貢献ができるようになる。

※1:経済産業省「エネルギー基本計画」(2018年7月)

※2:「化石エネルギー」は石炭、石油、天然ガスなど、「非化石エネルギー」は原子力や太陽光、水力などを指す。

※3:RE100(Renewable Energy 100%)は事業活動によって生じる環境負荷を低減させるため設立されたイニシアチブ。加盟企業は事業運営を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げている。

[図]FIT後の太陽光発電施設の取引プロセス