マンスリーレビュー

2020年1月号トピックス1情報通信

究極のモバイルライフを促す5G時代の夜明け

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2020.1.1

デジタル・イノベーション本部高橋 知樹

情報通信

POINT

  • 5Gへの移行でモバイルの活用は次のステージへ進化。
  • 真価は、モノの遠隔精密制御、ヒトの遠隔共同作業の革新。
  • ユーザーを巻き込んだ使い方の提案が5G普及のポイント。
移動体通信システムの技術規格は10年に一度、世代交代している(表)。1990年代の2Gでデジタル化、2000年代の3Gはデータ通信によるコミュニケーションの主役となった。そして2010年代の4Gを経て、2020年は5Gの実質的な普及元年になる。

5Gは①超高速・大容量(4Gの100倍)、②超低遅延(同10分の1)、③同時多接続(同100倍)を基本方針として設計された規格であり、超高精細映像の配信やゲーム、遠隔制御(製造、建設、医療、農業など)や自動運転などへの適用が期待されている。5Gで1ミリ秒の遅延や数cmの誤差を検討するレベルになり、4Gの時代に実現しえなかった実装面でのリアリティーが、ようやく追い付いてきたといえる。

5Gの波及効果は地域の労働力や産業の偏在を是正する可能性もある。仮想現実によるリアリティーに富んだコミュニケーション、モビリティの自由度の高まりがテレワークの拡大を促すだろう。バーチャル空間では職場と自宅がより近くなる一方で、物理空間では居住エリアの分散化を進める効果が期待される。地域の高齢者や海外居住者の雇用促進、多くの行動拠点間を自由に移動しながら仕事や生活を楽しむ「アドレスホッパー」の増加など、多様なコラボレーションも期待される。特に対面でのコミュニケーションを重視する世代にとって、リアルに近い感覚で対話できる手段として有効だ。国内外の企業や産業の立地にも大きく影響を与える可能性がある。

3Gはiモード、4Gはスマートフォンというように、端末が普及の起爆剤となった。5Gの場合には、ユースケースやユーザーエクスペリエンスの提案、インフラ整備コストの抑制によるサービス利用料の低減が重要になる。

前者について、総務省は5Gの経済効果を47兆円※1と試算しているが、その果実を手にするには、5Gを利用するユーザーや企業を巻き込んで「使い方」を共創する必要がある。後者については、異業種と連携したインフラの整備・共用の動きも進んでいる。周波数レベルでの時空間的な共用を進めて利用効率を上げたり、地域での自営利用を目的とした「ローカル5G」を活用し、地域の企業や自治体の参入を促すことも一案である。

※1:総務省「電波政策2020懇談会 報告書」(2016年7月)

[表]移動体通信システム技術規格の推移