マンスリーレビュー

2020年1月号トピックス3次世代インフラ

MaaSがもたらす豊かな生活

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2020.1.1

次世代インフラ事業本部樋口 浩隆

次世代インフラ

POINT

  • 自動運転、シェアリングなどの新技術を活用した「MaaS」が登場。
  • デジタル社会でも「実体験」は色あせず「移動+体験」を豊かに。
  • 新たな費用分担がサービス事業者と交通事業者の連携促進に寄与。
平成から令和に入り、「人の移動」が大きく変わろうとしている。自動運転やシェアリングなど新たなデジタル技術を活用したサービス「MaaS(Mobility as a Service)」が登場しつつある。交通手段の最適な組み合わせを通じて快適な移動を提供するもので、最近、日本でもさまざまな実証実験が繰り広げられている。MaaS普及は単に交通の効率化を達成するだけでなく、豊かな生活につながる社会変革を促す可能性がある。

デジタル社会が今後進展しても、人に会う、医療サービスを受ける、ショッピングや演劇などの娯楽を楽しむといった「実体験」が色あせることはなく、むしろますます価値を高めていくだろう。高齢者などの交通弱者にとっても朗報である。MaaSがあれば免許を返納しても、自分で車を運転するのと同様に行き来し、活動的な日々を送ることができる。普段の買い物や通院などのための「生活の足」を確保して、学びや労働、交流といった社会参加をする機会が広がるからだ。

MaaSはこうした実体験をさらに豊かにする。例えば観光の場合、地域内に点在する名所の周遊と、その地域までの長距離交通網を組み合わせて効率的に回れるようにすれば、おいしい食事を楽しみ、壮大な自然に身を置くような実体験をより多く手軽にできるようになる。このように、MaaSは利用者の目的(医療、観光など)を満たす手段として極めて有効だ。利用者の目的に沿った「モビリティ」と「アクティビティ」を組み合わせて提供する仕組みを、当社は「目的型MaaS」として提唱している(図)。

特に鍵を握るのが、交通事業者(モビリティ)とサービス事業者(アクティビティ)の連携を促す費用分担の仕組みだ。例えば、観光サービス側の収益から交通サービス側の費用を一部負担できれば、交通事業者には運賃以外の収入が、サービス事業者には新たな需要が、メリットとして生じる。こうした費用分担の仕組みに、公的な支援を組み合わせれば、生活の足である地域交通の改善につながるであろう。

人の自由な移動は、豊かな人間生活、地域活力を下支えする基本条件である。MaaSの継続的な運用で、だれもが多様な活動機会を得られる社会の実現を期待したい。
[図]目的型MaaSのイメージ

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