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オピニオン」では、資源循環とエネルギーの政策融合、すなわちカーボンニュートラル(CN)とサーキュラーエコノミー(CE)の融合が日本における持続可能な社会実現のカギであることを示した。では、具体的には何がボトルネックになっているのか。CN×CEへの実現に向け、企業各社さまざまな取り組みを開始しているが、その推進担当者からは、さまざまな悩み、産みの苦しみの声を聞く。図1はその主な声をまとめたものである。
1点目はCNとCEのトレードオフの発生だ。CEへ移行していくには、廃棄物を回収・リサイクルした再生資源を、再び製品製造に利用する循環型のサプライチェーンを構築・拡大していくことが必要だ。しかし新たなリサイクル技術の導入段階では、技術の成熟度が低く、規模も小さいため、エネルギー消費量が増えてしまい、短期的にはCNに逆行することもある。
2点目はCEに係る情報連携不足だ。CEに向けたサプライチェーンを構築するには、主体間の情報連携が必要であるが、情報の収集・共有には多大な時間と費用がかかる。そもそも循環型のサプライチェーンには、従来の製造業者や流通業者、小売業者に加えて、消費者や回収事業者、資源再生事業者など、さまざまな主体が参加するため、従来のサプライチェーン以上に協調関係の構築が難しく、誰がどのような情報を持っているかも容易にはわからない。CEに貢献できる製品の将来需要に関する情報も不足しており、CE移行に係る投資判断を鈍らせている。
3点目は対策コストの増加とその価格転嫁の難しさだ。CN素材や再生材の製造・利用に伴うコスト増加分は、製品価格に転嫁しなければ、事業採算性の悪化につながるが、コモディティ化した製品分野では、そのような価格上昇は需要の低下要因になる可能性がある。持続可能社会に資するとはいえ、高価格の再生材の利用に対する社内外の理解を得るのは難しい。
図1 企業担当者から寄せられた「CN×CE実現に向けた問題点」
三菱総合研究所作成