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社会課題×デジタル経営コンサルティング

第10回:AI導入を「PoC疲れ」で終わらせないためには

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2020.12.4

DX技術本部板倉豊和

社会課題×デジタル

POINT

  • PoC疲れ」のまん延が企業のAI導入意欲を減退させている。
  • 代替手段も加味した「あるべき姿」の共有が期待値のズレの解消につながる。 
  • PoCの位置付けと実運用までの工程表の共有がPoC疲れ克服のカギになる。
ここ数年、幅広い業界でAI導入が進んでいる一方で、AI導入にあたり「PoC疲れ」という言葉が注目されている。PoCとはProof of Concept(概念実証)の略で、新しい技術やアイデアの実現可能性の検証プロセスを指し、AI導入においても想定した効果が得られるか確認するなどの目的で本格的なAI開発の前に実行される。しかし初期のPoC段階から先に進まず、企業のAI導入意欲が薄れてしまう「PoC疲れ」に見舞われる企業がここにきて急増している。

「AIで何か業務効率化したい、活用できていないデータがあるのでAIを使って何とかしたい。AIなら人よりも難しい課題を解決できるはず」——という漠然とした相談が当社にもよく寄せられる。このような漠然とした相談からAI導入を始めると、PoCを実施すること自体が目的化し、PoC疲れを起こしやすい。

PoC疲れを起こす主な要因は、AIを導入する現場と意思決定を行う経営層、AI技術を提供する企業との間にさまざまな認識のズレが生じることである。
表 「PoC疲れ」を引き起こす認識のズレ
表 「PoC疲れ」を引き起こす認識のズレ
出所:三菱総合研究所
これらのズレの発生を防ぐためには、導入検討の初期にPoCから本格導入に至る「AI導入構想」をしっかりと練ることが重要である。そのポイントを以下に示す。

【ポイント1】AI導入後の業務の姿(あるべき姿)の策定や導入効果の評価

現在の業務に関し、AI導入後の業務の姿(あるべき姿)をステークホルダー間で検討・共有する必要がある。ステークホルダーとしては導入現場、経営者層、AI技術の提供者などが考えられる。検討に際してはAI導入が最も効果的な業務や作業プロセスを特定することが肝要である。

対象業務をAIで完全に代替させるだけでなく、人間の作業を支援するツールの一つとして位置付けることでAIの性能が発揮されることにも留意するべきである。必ずしもAIの導入が最善とは限らない。例えば、AIによる認識精度がそれほど高くない場合でも、手間のかかる作業を軽減したり、作業ミスや見逃しを減らすことなどに活用し、人が判断すべき量を減らすことができる場合もある。

業務課題の明確化や導入効果の試算が正しく行われていないために、PoCが失敗しているケースが多い。特にAIの性能については、本格導入の判断材料となるよう、導入効果を評価する方法を、現場と経営層は理解しておく必要がある※1

【ポイント2】AI導入後の「あるべき姿」に至るまでの工程表を作成・共有

「あるべき姿」を実現する上で、PoCの位置付けを明確化し、スケジュールや予算を含めた実用化までの工程表を用意する。ただし、この性能ではAI導入する業務が効果的に運用できないと現場が判断した場合には、PoC終了時点でAIの性能について期待値のズレが発生する。この場合、検証すべきAI技術や業務への適用方法の再検討、学習するデータや量を変えたPoCの再実施が必要になる。これは導入基準に従った、真に課題解決となるAI導入に必要な検討プロセスであり「PoC疲れ」ではない。

業務の「あるべき姿」を策定するという点では一般的なシステム導入でも同じであるが、AI特有のさまざまなズレを認識、解消するためのPoCであり、導入検討の初期に複数回実施する可能性があることから本格導入に至る工程表を含めた「AI導入構想」をしっかりと練ることが「PoC疲れ」に終わらないAI実用化につながる。

※1:AIの性能に関しては、当社コラム「AIで変わる社会」においても企業が本格的なAI導入を判断する上で必要なAIの導入効果を評価するための考え方をより具体的に挙げている。
AIで変わる社会「第6回 「PoC疲れ」には効果起点のAI評価が効く」

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