マンスリーレビュー

2019年7月号トピックス3エネルギー・サステナビリティ・食農

G20を支える専門家集団の存在

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2019.7.1

環境・エネルギー事業本部西村 邦幸

エネルギー・サステナビリティ・食農

POINT

  • 課題山積の国際情勢の中、日本はホスト国として初のG20を開催。
  • 提言グループに加わった当社は包括的な脱炭素社会の構築を主張。
  • 世界的な課題解決に向けて各国政府はグループの提言活用促進を。
貿易戦争や気候変動による災害、移民・難民問題、テロ対策など、世界における課題は山積みである。この状況の中で、日本を初のホスト国とする主要20カ国・地域(G20)首脳会議が6月、大阪で開催された。

各界の意見を首脳会議に反映させ討議を実りあるものにするために、専門的な人材が集まる「エンゲージメント・グループ」が毎年のG20首脳会議に合わせて組織される。20カ国・地域の経済団体で構成される「B20」(2010年創設)を皮切りに、現在は労働組合の「L20」、若者代表の「Y20」、シンクタンクの「T20(Think20)」など計八つのグループがある。当社は今回T20に参画して、気候変動と環境を議題とするタスクフォース(TF)3のメンバーとなった(図)。

TF3では、先進的な各種措置を通じて脱炭素社会への移行を進めるとともに、循環型の経済社会実現に向けた国際的な政策協調体制づくりを目指すよう提言した。この中で当社は「イノベーション・適切な技術・地域ベースの再生可能エネルギーを用いた包括的な脱炭素社会の構築」を掲げた。

先進国に比べて技術の普及が遅れている途上国では、むしろ新技術導入への社会的制約が少ない。例えば、大型の発電所や送配電システムが整備されていなければ、過去の投資の採算性を考えることなく地域分散型の再エネ設備を新規に導入しやすい。こうした「リープフロッグ(かえる跳び)型」の発展を目指して、対象地域の生活様式やエネルギー利用形態に配慮しつつ技術移転を進めれば、再エネによる電化や雇用の恩恵を地域の人々に広く平等に行き渡らせることができる。

今回初めて提言策定に加わり、国内外の多彩な関係者から成るエンゲージメント・グループが示す幅広い知見を、日本をはじめとする各国政府が持続的に政策に採り入れて活用する余地がまだ残されていると感じた。そうすればG20首脳会議が世界の課題解決に果たす役割は、さらに増すであろう。
[図]エンゲージメント・グループとT20のタスクフォース