マンスリーレビュー

2019年7月号トピックス5ヘルスケア・ウェルネス

リアルワールドデータを活用する鍵

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2019.7.1

ヘルスケア・ウェルネス事業本部降籏 志おり

ヘルスケア・ウェルネス

POINT

  • 医療に関するリアルワールドデータ活用への期待が高まっている。
  • 審査が厳格なことから実際の利用は非常に難しいのが実情。
  • 社会課題解決のために利用手続き上のハードルを下げる必要あり。
増加の一途をたどる医療費を適正化し、エビデンスに基づき医療の質を向上させるため、臨床現場から日々得られる患者単位の「リアルワールドデータ」への期待が高まっている。代表例としては、厚生労働省が提供しているレセプト※1情報・特定健診等情報データベース(NDB※2)や、全国23の大病院から電子カルテなどを収集・統合したMID-NET※3がある。

しかし、NDBは公益目的、MID-NETは製造販売後の調査ないしは公益性の高い研究にしか使うことができない。さらに、コストが非常にかさむなど利用上のハードルも高い(表)。医療データが個人のプライバシーに深く関わるため取り扱いに細心の注意を要することから、その利用には厳格な審査が求められるからだ。

リアルワールドデータは、日常診療における診療記録など、研究以外の目的で作成されたデータであり、複数の病気を抱えた患者や、確実な診断がつかない患者に対して実際に行われたさまざまな医療行為が記録されている。二次利用によってこうした利点を活かせば、臨床研究の枠組みでは把握できない、複数の種類の服薬による副作用の発生条件などを割り出すヒントにもなりえる。一方で、研究目的のために必要な信頼性が確保される方法で収集された臨床研究データなどと異なり、多くの欠損や偏り(バイアス)を含んでいる。従来の医療統計では扱いづらい、クセのあるデータでもある。

欠損とバイアスは大半のビッグデータにつきものだが、医療以外の分野ではその克服 に向け、知見やノウハウが蓄積されつつある。交通情報の活用、購買履歴の分析などで培われたビッグデータ分析技術は、リアルワールドデータにも適用できるはずだ。

確かに医療データの扱い自体は慎重にすべきである。一方で、もっと多くの知恵と自由な視点を分析に取り入れる機会があれば、欠損とバイアスを抱えたデータであっても、さまざまな成果が出るだろう。社会課題を少しでも早く解決するために、利用手続き上のハードルが下げられ、リアルワールドデータをより多くのユーザーが活用可能になることを願う。

※1:医療機関が保険者に医療費を請求するために発行する診療報酬明細書。

※2:レセプトの情報と、40歳以上を対象に行われている特定健診・保健指導の結果から構成されるデータベース。

※3:Medical Information Database NETwork: 厚生労働省と独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が構築した。2018年度に本格運用が開始され、PMDAのほか、製薬企業や学術関係者も利用可能となった。

[表]リアルワールドデータ活用へのハードル

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