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2019年7月号トピックス4地域創生

スマートシティにいま求められるもの

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2019.7.1

地域創生事業本部田村 隆彦

地方創生

POINT

  • スマートシティ実現の環境が提唱から約10年を経て整いつつある。
  • 今後は技術の実証から社会受容性を醸成する段階へと移行していく。
  • 事業者と住民が信頼関係に基づく協働体制を構築できるかが鍵となる。
人々の行動データなどを集約・活用し、地域の多様なサービスを効率化・高度化させる「スマートシティ」構想が、提唱から約10年を経てようやく実現しつつある。初期段階では電力に代表されるエネルギーマネジメントの技術実証が中心だったが、AIやIoTを駆使して経済発展と社会課題解決を両立させるSociety5.0の概念のもと、近年は自動運転や健康データ利活用といった分野にも広がりを見せている。

実装フェーズでは、これまでの技術実証に加えて、行動データなどが集約・活用されることを住民が心理的に受け入れられるかという社会受容性がポイントとなる。試行を繰り返しながら住民の意向を反映していくには、自治体や企業などのサービス事業者と、住民との密なコミュニケーションが必要である(図)。

神奈川県藤沢市の工場跡地にパナソニックが中心となって整備してきた「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」では、各世帯の属性を把握した上での使用状況を勘案したエネルギーの賢い利用法の助言や、通行人の数に合わせて街灯の明るさを自動で調節するなど多彩なサービスを行っている。背景には、住民がサービス経費の一部負担を前提に入居し、かつ事業者と議論する場が整っていることがある。

既存のコミュニティーにおいてデータ利活用の社会受容性が醸成された例としては、長野県飯田市が挙げられよう。同市は戦後の大火からの復興で中学生が自発的に植樹した「りんご並木」がまちづくりの原点にある。地域の将来を住民と行政が話し合う気風があり、地域ごとの協議の場が機能している。こうした土壌に支えられ、医師や看護師、介護事業者とで診療情報を共有して医療を効率化するシステムを早期に実現している。

スマートシティの実現には、住民と事業者の協働が鍵となる。すなわち、個人情報の保護やデータ利活用の範囲などに関する関係者の合意を大前提に、言いたいことを何でも言い合える関係が必要となる。信頼関係が試行の円滑化、訴求力のあるサービスの提供、ひいては地域全体の価値を大いに高めることにつながる。住民と事業者とのこうした関係の構築が、結果として自律的な事業を成立させる近道となろう。
[図]スマートシティ実現に必要な要素

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