新たなITであるAI(人工知能)とロボティクスは、自動化と相互結合を多面的に進展させる。それにより新たな製品・サービスの提供が促進され、経済成長に資することが期待される。それでは、AIやロボット技術の普及は、IT革命時の米国で見られたような全要素生産性(TFP※1)の上昇による成長の加速をもたらすであろうか。
IT革命進展時(1995年~2005年)の日米の状況を比較し、日本の特徴を見ると、その間の労働生産性(GDP/労働者数)の伸び自体は、日米で大差はない。しかし、労働生産性を資本深化(資本ストック/労働者数)とTFPに分けて分析すると、資本深化は日本の伸びが高いのに対し、TFP、とりわけ非IT製造業(その他産業)のTFPが米国を下回っていることが分かる(図)。
推計に際して、GDPの増加につながるTFPを、IT製造業と、それらを活用する「その他産業」に分解※2した。日米でIT製造業のTFPは大差がなく、それぞれ同程度のIT資本財価格低下がもたらされた。しかし、「その他産業」のTFPにおける日米の差は顕著であり、日本0.2%に対して米国0.8%とかい離している。つまり、「その他産業」でIT技術を用いた新製品・サービスによる新市場開拓面で日本は大きく後れを取り、経済成長に差が生じる一因となったと考えられる。
2019年6月に公表されたIMD「世界競争力年鑑2019」の個別項目が示すとおり、日本の「企業におけるデジタルトランスフォーメーション(企業がIT技術を活用し、事業の対象を積極的に変化させる)」は51位(63カ国・地域中)と評価が低い。この状況が続けば、日本でAI・ロボットが導入される過程においてもIT革命時と同じ轍を踏み、経済活動をかえって縮小させてしまうおそれがある。そのシナリオを回避し、AI・ロボットを単に効率化(人員削減)の手段ではなく、新製品・サービスの創造に活用して市場拡大と経済成長につなげるには、幅広いオープンイノベーションと、AI・ロボット化に伴う産業構造変化に対応する規制改革の迅速な推進が必要である。
IT革命進展時(1995年~2005年)の日米の状況を比較し、日本の特徴を見ると、その間の労働生産性(GDP/労働者数)の伸び自体は、日米で大差はない。しかし、労働生産性を資本深化(資本ストック/労働者数)とTFPに分けて分析すると、資本深化は日本の伸びが高いのに対し、TFP、とりわけ非IT製造業(その他産業)のTFPが米国を下回っていることが分かる(図)。
推計に際して、GDPの増加につながるTFPを、IT製造業と、それらを活用する「その他産業」に分解※2した。日米でIT製造業のTFPは大差がなく、それぞれ同程度のIT資本財価格低下がもたらされた。しかし、「その他産業」のTFPにおける日米の差は顕著であり、日本0.2%に対して米国0.8%とかい離している。つまり、「その他産業」でIT技術を用いた新製品・サービスによる新市場開拓面で日本は大きく後れを取り、経済成長に差が生じる一因となったと考えられる。
2019年6月に公表されたIMD「世界競争力年鑑2019」の個別項目が示すとおり、日本の「企業におけるデジタルトランスフォーメーション(企業がIT技術を活用し、事業の対象を積極的に変化させる)」は51位(63カ国・地域中)と評価が低い。この状況が続けば、日本でAI・ロボットが導入される過程においてもIT革命時と同じ轍を踏み、経済活動をかえって縮小させてしまうおそれがある。そのシナリオを回避し、AI・ロボットを単に効率化(人員削減)の手段ではなく、新製品・サービスの創造に活用して市場拡大と経済成長につなげるには、幅広いオープンイノベーションと、AI・ロボット化に伴う産業構造変化に対応する規制改革の迅速な推進が必要である。
※1:全要素生産性(Total Factor Productivity)の略で、生産要素である資本や労働投入量の変化によらない生産増加分に対応する。具体的には、生産効率の向上や、技術進歩(イノベーション)などを表す指標である。
※2:「Jorgenson, D. (2001), Information Technology and the U.S. Economy, American Economic Review, 91(1)pp. 1-32」の方法に基づき分解。