マンスリーレビュー

2020年11月号トピックス6エネルギー・サステナビリティ・食農

50周年記念研究 第10回:メタル資源が使えなくなる日を回避する

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2020.11.1

セーフティ&インダストリー本部近藤 直樹

POINT

  • 鉱物資源需給がひっ迫する懸念。ベースメタルである銅も供給不足に。
  • 持続可能な供給には、素材代替、機能代替による需要低減が重要。
  • 寿命延長に限らない、データに基づいた全体最適化の検討を。
世界人口が100億人に近づく50年後、鉱物資源の需給がひっ迫する可能性がある。とりわけ、代表的なベースメタル※1である「銅」の状況は深刻である。銅は、社会インフラから生活必需品まで広範に利用される一方、地表近くに少量しか存在せず採掘量に限界がある。埋蔵全体量が多い鉄やアルミニウムと異なり、このままでは2020年比で約2倍にもおよぶ50年後の需要に対応不可能となる(左図)。

2070年に世界全体の銅需要を満たす手段としてリサイクル率の向上が考えられる。しかし、現実的には限界値である90%を達成しても十分ではないとされる。銅の含有量0.1%未満の低品位な銅鉱石の利用にも着手せざるを得ない。その結果、2080年にはエネルギー消費量が約16倍に跳ね上がり持続的な銅の利用が困難となる(右図)。
 
方策としては、「寿命延長」と「需要低減」が考えられる。しかし、寿命延長では仮に寿命を1.5倍に延長して新規需要を抑えても、2080年ごろに低品位鉱石の利用に着手せざるを得ない。銅製品を大切に長く使う寿命延長はエネルギー消費量の観点からは得策ではない。一方で需要低減の場合、仮に年率0.3%のペースで削減すれば、需要抑制の効果は寿命延長に比べて劣るものの、低品位鉱石の利用開始を遅らせ、エネルギー消費量を抑制できる。
 
このことは、「寿命延長」によらない「需要低減」の重要性を物語っている。例えば、銅管を鉄やプラスチックで置換するなどの「素材代替」、銅線に代わり無線技術を採用するなどの「機能代替」が求められる。もう一つは、積極的にリサイクルすることの重要性である。この場合は、「利用頻度の少ない銅製品のリサイクル促進」「リサイクルしやすい銅製品の設計」などが考えられる。

こうした論考は鉱物資源全般に通じる。エネルギー消費も含めたトータルな資源最適化戦略は国内外を問わず重大な命題といえよう。「長く使う」という寿命延長に固執せずにデータに基づき最適解を追求し続ければ、食料・水・エネルギー・素材など互いに連関する各資源の持続可能な開発に寄与することに必ずつながる。

※1:非鉄金属の内、銅、鉛、亜鉛は金属素材として多様な用途に用いられることから、ベースメタルと呼ばれる。なお、金、銀、白金などは資源量が少ないため貴金属として区別されている。

[図]銅の需要量推移と銅供給に係るエネルギー消費量