マンスリーレビュー

2020年11月号トピックス1地域コミュニティ・モビリティ

「持続可能な観光」をテコにした地域創生を

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2020.11.1

スマート・リージョン本部宮崎 俊哉

地域コミュニティ・モビリティ

POINT

  • アフターコロナでも観光は地域創生の基幹産業であり続ける。
  • 地域の総合力を発揮する「持続可能な観光」への転換が原動力。
  • コロナ禍をバネに、理想的な「持続可能な観光」を実現させよう。
コロナ禍により、社会経済のあらゆる分野で解決を先送りにしてきた課題が顕在化している。国内の観光産業においても外出自粛に伴う集客難などにより、「生産性の低さ」「事業継承の困難さ」「労働環境の不備」など潜在的課題がクローズアップした。この状況が続けば観光起点の地域創生に支障が生じかねない。

観光産業復活の一端は、国連世界観光機関(UNWTO)をはじめとした機関、政府、団体が提案する「持続可能な観光(サステイナブル・ツーリズム)」が握っている(図)。旅行先地域の社会・文化・環境の維持を第一優先とする事業コンセプトである。近年問題視されるオーバーツーリズム※1の解決手段にもなりうるとあって注目度は高い。

サステイナブル・ツーリズム実現に向けて、「科学的分析に基づく指標を活用した観光地域経営(EBSTM)※2」を実施する地域も増えた。世界約30カ所の導入地域が加盟している国際ネットワーク「INSTO」※3の報告によると、イタリア南チロル地方では指標導入などによる細密なマネジメントが消費エネルギー削減や交通渋滞の緩和などにつながり、地域住民の不満解消の効果が得られた。国内でも観光庁が2020年6月に「日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)」を策定、今後のEBSTMの普及が期待される。エコツーリズム※4など高付加価値型旅行※5の開発も加速しよう。

EBSTMは指標導入に伴う目標管理設定によるPDCAサイクルに基づくマネジメントを内包する。観光産業が生産性改革に着手する好機ともいえる。ただし、ビジネス一辺倒の経営姿勢はあつれきを生むことから、地域の住民や各所への配慮は常に欠くことができないだろう。地域での合意形成の仕組みは早急に整える必要がある。

一方でEBSTMは、観光客自らが訪問地域への責任を果たす「レスポンシブルツーリズム」を求めるものである。観光産業再編もありうる今だからこそ、観光客が率先して地域の課題解決に参加する理想を追求すべきだ。新旧民間主体、自治体、観光地域づくり法人(DMO)※6、そして住民や観光客など全ステークホルダーの参加により観光産業の発展とSDGsが達成される未来は近い。

※1:観光地が受け入れられるキャパシティを超えて観光客が押し寄せる状態。

※2:Evidence-Based Sustainable Tourism Management。運輸総合研究所、国連世界観光機関(UNWTO)の駐日事務所(RSOAP)によって整理された概念。

※3:International Network of Sustainable Tourism Observatories。2004年に構築された、観光地単位で、指標に基づく観光地づくりの活動のモニタリングを行うネットワーク。28カ国・約30地域が参加し、UNWTOが運営している。

※4:環境省のエコツーリズム推進会議では「自然環境や歴史文化を対象とし、それらを体験し、学ぶとともに、対象となる地域の自然環境や歴史文化の保全に責任を持つ観光のありかた」としている。

※5:エコツーリズムのほか、農山漁村地域で余暇を過ごす「グリーンツーリズム」、その土地の食文化に触れることを楽しむ「ガストロノミーツーリズム」などがある。

※6:Destination Management / Marketing Organization。政府が提唱する「まち・ひと・しごと創生基本方針」には、地域の観光振興を戦略的に推進する主体として、育成・支援が盛り込まれている。

[図] 国内外における主要な観光マネジメント指標の特徴とEBSTM導入効果