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2020年11月号トピックス5経済・社会・研究開発

世界金融危機並みの余剰雇用に対応するには

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2020.11.1

政策・経済センター田中 康就

経済・社会・研究開発

POINT

  • 企業内の余剰雇用は世界金融危機時並みの高水準に達している。
  • 時間調整で失業率は抑えられているが顕在化する恐れもある。
  • 政府は雇用維持策だけでなく業種間の労働移動促進の本格化を。
新型コロナウイルス感染拡大による経済活動抑制を受けて、2020年4〜6月期の日本の実質GDPは前期比マイナス7.9%と、比較可能な1980年以降で最大の落ち込みを示した。その割には7月の失業率は3.0%と、低めに推移している。

だが、雇用実態はかなり悪い。8月の総労働時間(雇用者数×1人あたり労働時間)を見ると、2019年12月比の業種別減少率は、最大となった広告業で36%に達した。もともと消費低迷のあおりを受けやすいだけでなく、コロナ禍による外出自粛で屋外の看板や広告が急減した。これに道路旅客運送業23%、宿泊業22%、飲食店13%と続く(図)。逆に増えたのは、通信教育などの学習支援業と鉄道業だけであった。

こうした仕事量減少に対し、日本企業が解雇ではなく時間調整を主体に対応してきたことが、失業率抑制の背景にある。だが、過去のデータをもとにGDPなどに見合う雇用者数を推計した上で算出した4〜6月期の企業内の余剰雇用者は、約480万人に達した。これはすでに、世界金融危機当時と同じ水準である。

今後は、外出自粛の悪影響が大きい業種を中心に、時間調整だけでなく雇用削減に踏み切る企業も増え失業が顕在化する恐れがある。コロナ禍が長期化すれば企業の資金繰り懸念が一段と強まり、倒産や解雇も増えかねない。一方、雇用調整助成金の特例措置は2020年末まで延長されたものの、その後段階的に縮小される予定だ。財政事情が厳しい中、雇用維持政策だけで失業率の大幅上昇を回避するには無理があろう。

新型コロナのワクチンや治療薬が普及するまでは、外出自粛の影響を受ける業種の需要が持ち直す可能性も低い。政府は失業率が低めにとどまっているうちに、産業構造の変革を見据えた抜本的な対策を打つ必要があるだろう。

具体的には、急回復が当面見込めない宿泊業や飲食業などから、一定の需要や成長が期待できる業種への労働移動を強く後押しすべきだ。少子高齢化を背景として介護職などが受け皿となりうる。その際は介護職自体の待遇改善と合わせ、現場にロボットが入っていくことも想定して、デジタル人材の育成も忘れてはならない。
[図] 新型コロナ感染症が流行する前後の総労働時間の変化率(2019年12月から2020年8月)

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