VUCA時代、企業が経営戦略と人材戦略を連動させ、人的資本投資の活性化を図ることの重要性がこれまでになく高まっていることは、MRIエコノミックレビュー「DX・GX時代の『企業の人的資本投資』のあり方」でも指摘したところだ。しかし、デジタル化によるDXや脱炭素化の進展に伴うGXを契機とした今般の産業構造変化は、個社単位の事業構造転換や人材育成の取り組みの範囲を超える可能性が高い。自動車産業におけるEV化や再生エネルギーへの電源構成の転換などは、個社における人材戦略の再構築という範囲を超え、これまでの基幹産業の衰退と新たな基幹産業の誕生という、産業レベルでの「スクラップ&ビルド」につながることが見込まれる。
こうした状況下、日本全体で人的資本投資を進め、成長領域に向けて人材を育成・移動させていくには、どのような視点が必要となるのか。
今、日本の経済社会の再活性化を期して「人的資本経営」の促進が官民協働で取り組まれ始めている。企業の人材投資を活性化し、経済成長の原動力とするという取り組みだ。「失われた30年」を経て、われわれはこの新たな戦略を着実に進めていく必要がある。
本コラムでは、前・中・後編の3回にわたって、現在進みつつある企業単位での「人的資本経営」を拡張し、個社での対応にとどまらず、社会全体の底上げを促進するための概念として、産業クラスター単位、地域単位での人的資本投資を進める「地域版人的資本経営」の推進を提言する。
提言にあたっては、以前から人材の重要性が叫ばれながら、日本社会で企業を超えた人的資本投資が十分になされてこなかった背景について考察し、これを乗り越えるための枠組みとして「地域」での人的資本投資に注目する理由を示す(前編)。さらにイギリス、ドイツ、スウェーデンの先行事例を取り上げ、地域での人材開発の要点を抽出する(中編)。最後にそれらを踏まえた日本での「地域版人的資本経営」具体化に向けて、主要なステークホルダーが担うべき役割を取りまとめる(後編)。
こうした状況下、日本全体で人的資本投資を進め、成長領域に向けて人材を育成・移動させていくには、どのような視点が必要となるのか。
今、日本の経済社会の再活性化を期して「人的資本経営」の促進が官民協働で取り組まれ始めている。企業の人材投資を活性化し、経済成長の原動力とするという取り組みだ。「失われた30年」を経て、われわれはこの新たな戦略を着実に進めていく必要がある。
本コラムでは、前・中・後編の3回にわたって、現在進みつつある企業単位での「人的資本経営」を拡張し、個社での対応にとどまらず、社会全体の底上げを促進するための概念として、産業クラスター単位、地域単位での人的資本投資を進める「地域版人的資本経営」の推進を提言する。
提言にあたっては、以前から人材の重要性が叫ばれながら、日本社会で企業を超えた人的資本投資が十分になされてこなかった背景について考察し、これを乗り越えるための枠組みとして「地域」での人的資本投資に注目する理由を示す(前編)。さらにイギリス、ドイツ、スウェーデンの先行事例を取り上げ、地域での人材開発の要点を抽出する(中編)。最後にそれらを踏まえた日本での「地域版人的資本経営」具体化に向けて、主要なステークホルダーが担うべき役割を取りまとめる(後編)。