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2021年3月号特集3エネルギー防災・リスクマネジメント

福島第一原発の廃炉で求められる研究開発の転換

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2021.3.1

セーフティ&インダストリー本部近藤 直樹

エネルギー

POINT

  • 放射能漏れリスクは激減したが廃炉に向けては未知の課題が山積。
  • 30年先を見据えて致命傷になりうる課題については研究開発の複線化を。
  • 廃炉完了の姿を具体化するための判断材料を今後10年でそろえるべきだ。 
東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故から10年を経て、放射性物質が漏れ出すリスクは激減した。敷地の大半では普通の作業着姿で過ごすことができ、作業も整然と進められている。しかし、原子炉の格納容器内で放射性物質がどのような状態にあるか十分には把握できておらず、処理水を貯蔵するタンクの数も限界に達しつつある。こうした中で安全かつ確実に廃炉作業を進めるのは、ろうそくの火だけを頼りに、星なき夜道を歩いていくような難しさがある。

廃炉完了の目標は約30年後とされる。乗り越えるべき技術的課題は作業の遠隔化、廃棄物量の最小化、設備や施設の耐久性診断・補修などに関するものである。高濃度の放射性物質である「燃料デブリ」の管理徹底と、施設や設備の健全性維持などを長期にわたって実現し、被ばくリスクを極力抑え込まなければならないためだ。

差し当たって今後10年間で求められるのは、クイックルックとバックキャストの視点に基づく研究開発戦略である(図)。具体的には、足元だけでなく、拙速でも構わないので可能な限り先まで見つつ、廃炉の方針と、それに関連付けられた研究開発計画の検証を繰り返す必要がある。例えば、燃料デブリの取り出し完了までにかかる期間やコスト、作業員の被ばく線量や廃棄物の量を問い続ける。その都度出る試算の結果次第では、方針を早めに転換することで膨大な時間と資金の空費を避けられる。

そして、致命傷になる可能性がある課題については、まったく新しい燃料デブリ取り出し工法を視野に入れるなど、研究開発をあらかじめ複線化しておく必要がある。事態の行き詰まりを避けるための保険だと考えれば、複線化のコストは無駄にはならない。また、多角的な見地から難度の高い課題に対応するには従来の枠を超え、研究開発に参画する主体をさらに多種多様にすべきだ。

ここまでの10年は緊急冷却や汚染水対策に追われながらも、原子炉格納容器内の調査が手探りで進んだ。何が分かって、何が分かっていないのかは明確になったのだ。これからの10年は、何ができて、何ができないのかを明確にする必要がある。
[図] 福島第一原子力発電所の廃炉に向け今後10年間で求められる研究開発の在り方

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