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2021年3月号トピックス1防災・リスクマネジメント

日常生活に防災を無理なく実装する「フェーズフリー」

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2021.3.1

未来共創本部岡田 圭太

防災・リスクマネジメント

POINT

  • 防災意識を日常的に保つのは難しい。無理なく備える手段とは。
  • フェーズフリーは社会の脆弱性を下げうる防災コンセプト。
  • 日常ユースの製品・サービスに非常時にも役立つ機能を付加したい。
災害の発生は、巨大地震やコロナ禍などの「ハザード(危機)」が「社会の弱点(脆弱(ぜいじゃく)性)」を突くことで引き起こされる。危機の発生そのものは制御不可能としても、脆弱性を下げて災害に備えることには人知が及ぶ。防災教育や防災用品の備蓄などは生活者目線で実施可能な一例といえよう。しかし防災意識を高く保つことは容易でない。危機を想像できても日常生活に忙殺されればやがて失念する。用品の備蓄はコストにもなる。生活に無理なく防災機能を組み込む必要性が高まっている。

ここにきて「フェーズフリー」※1と呼ぶ防災コンセプトに注目が集まっている。日常と非日常(災害時)という2つの状態(フェーズ)の垣根を自然なかたちで取り払う(フリーにする)。ポイントは、日常生活の質(QOL)も非常時と同等に評価されることにある。蓄電池を搭載するプラグインハイブリッド車(PHV)が家庭用電源に転用可能なことは好例だ(表)。PHVに搭載する蓄電池の平時の役割は燃費性能向上と温室効果ガスの排出削減にある。これがフェーズフリーのもとでは停電・災害時の緊急電源として活躍する。

もちろん、非常時の代替を目的とした予防措置などの発想は従来からあった。しかし二重投資や冗長性の問題がついて回った。フェーズフリーでは普段使いで活躍する用品が緊急時に白馬の騎士と化す。ここには無駄がない。東京都豊島区の南池袋公園※2では、普段は涼をもたらすミストがいざというときは延焼防止に役立つよう設計されている。まさに古くて新しい「陰陽一体」のデザインといえよう。

フェーズフリーはより多様な分野に普及するだろう。例えば、コロナ禍におけるリモートワーク。元来は生産性向上のツールとして登場した。それが3密回避の切り札となったことは記憶に新しい。備蓄食料の代表である缶詰も今やおうち時間の晩酌の頼もしい味方で、日常・有事共用のフェーズフリー用品といえる。ヘルスケア分野でも、健康診断データをゲームなどを通じて日常的に収集できれば生活習慣病という危機を未然に防げる。エコマークと同様に認定制度が導入されれば消費者はフェーズフリーな製品を好んで購買する。メーカーの差別化戦略の一助ともなるだろう。

※1:一般社団法人フェーズフリー協会の佐藤唯行代表理事が2014年に提唱した。同協会は体系化と普及啓発に取り組んでいる。

※2:豊島区がフェーズフリーデザインを積極実装した事例。避難場所・復興拠点としても最適な空間設計がなされている。

[表]フェーズフリーな製品・サービスの例をプラグインハイブリッド車、公園、缶詰、リモートワークの項目について表示

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