マンスリーレビュー

2021年3月号特集4エネルギー

福島の環境再生に向けて大局的にいま一度議論を

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2021.3.1

セーフティ&インダストリー本部鬼頭 孝通

エネルギー

POINT

  • 福島の環境再生において除去土壌などの最終処分は解決すべき優先課題。
  • 震災10年を機に、俯瞰的な情報に基づいて科学的に合意形成を。
  • 議論の土台となる複数のシナリオを国民総意のもとで共有すべき。
2011年3月の原子力発電所事故に伴う環境汚染。事故から10年が経過し、除染・廃棄物処理ともに完了のめどがつきつつある。その間、過重な負担を強いられてきた福島の方々の思いはいかばかりか—。課題は、除去土壌などの再生利用や最終処分などに絞られてきた。しかし社会的な理解や議論が十分に尽くされたとはいい難い。

福島県内の除染に伴い発生した除去土壌などについては、福島の方々の思いに寄り添った総合的な判断に基づいて、中間貯蔵開始後30年以内に県外最終処分することが法律で定められている。ただし、今後の具体的な道筋については検討の途中にある。

県外最終処分にあたっては、大量の除去土壌などをいかにして効率的に減容処理するかが大きな課題の1つである。国では技術開発の戦略目標年度(2024年度)までに減容処理の基盤技術開発を一通り完了し、それ以降は最終処分方式のさらなる具体化などが行われる予定となっている。事故から10年が経過したことを機に、より踏み込んだ議論を開始するタイミングといえよう。

重要なのは、国民的な課題であるという大前提にいま一度立ち戻り、俯瞰(ふかん)的・多面的な情報に基づいて、科学的に合意形成を図っていくことにある。とはいえ、多様な条件・見解を考慮した「多元方程式」は解法が難しく、冷静・着実な議論と意思決定を段階的に進めていくことが求められる。着手すべきは、議論の土台として多様な可能性を考慮した複数のシナリオを用意し、国民総意のもとで共有することだ。

具体的には、「法令上の要件」「被災地の思い」「技術開発の進展」を十分に踏まえながら、相互に影響し合う「処分量・放射能濃度」「トータルコスト」「適地条件・合意プロセス」のバランスを慎重に考えていくことになろう(図)。すでに、2045年までの県外最終処分完了を念頭に、考えられる処理方法を組み合わせたシナリオが複数検討されてきている※1が、環境放射能とその除染・中間貯蔵および環境再生のための学会(通称:環境放射能除染学会)では、より広範な選択肢として長期保管などのシナリオが提起されている※2。今後議論を深めていく上で、これらを相対比較することも有意義だろう。

※1:環境省では、最終処分対象物の減容化の観点から、分級処理、熱処理、飛灰洗浄処理などの減容技術の組み合わせから成る種々の最終処分シナリオを検討している。

※2:一般社団法人 環境放射能とその除染・中間貯蔵および環境再生のための学会(通称:環境放射能除染学会)の県外最終処分に向けた技術開発戦略の在り方を取りまとめるための研究会では、福島県外での最終処分シナリオに加え、中間貯蔵施設の発展的利活用による低放射能濃度土壌の長期保管、県内管理型処分場相当における高放射能濃度土壌の長期保管、最大濃縮した溶融飛灰の県外遮断型処分場相当における最終処分あるいは原因者返還などのシナリオについても検討が行われている。

[図] 福島の環境再生に向けた俯瞰的・多面的な情報に基づく合意形成

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