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社会課題×デジタルデジタル・イノベーション

第5回:モノづくり文化を活かしたアジャイル開発の普及

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2020.9.18

社会ICTソリューション本部沖山 航

社会課題×デジタル

POINT

  • DX時代の到来に向けて近年アジャイル開発への注目が高まっている。
  • アジャイル開発の起源には日本のモノづくり文化が深く関わっている。
  • モノづくりで培われた密な対話・三現主義を活かしたアジャイル開発の普及に期待。
競争環境や顧客ニーズが目まぐるしく変化するDX(デジタルトランスフォーメーション)時代の到来に備え、近年アジャイル開発が注目を集めている。本開発手法は、「①ユーザーと開発者が密な対話を行い」、「②短期間のシステム実装を繰り返してフィードバックを受けながら改善を図る」ものである。迅速・柔軟なシステム開発を志向して採用されるケースが多い。

日本は海外と比べ、アジャイル開発の普及が遅れているといわれている。しかし、起源をたどると、トヨタ生産方式や一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏らが提唱したスクラムの考え方が大きな影響を与えていることがわかる※1。また鉄道産業などのモノづくりに近い分野では、欧州メーカーが標準プロセスやドキュメンテーション重視の開発を行っているのに対し、国内メーカーは顧客との密な対話や三現主義を重視した開発を行っている傾向がある。これらの思想はアジャイルソフトウェア開発宣言※2で重視されている価値観と共通する点が多く、実は日本はアジャイル開発との相性が良いのではないかという仮説が浮かび上がる。

それではアジャイル開発の普及を阻害している要因は何か。主な原因として、外注ベースのシステム開発を行っている企業が多い点が挙げられる。システムの外注においては、完成責任を前提とした請負契約を締結する場合が多いが、そのためにはあらかじめ開発スコープを明確にしておく必要がある。一方、アジャイル開発ではユーザーからのフィードバックに応じた柔軟な開発を行うため、スコープが変動しやすい傾向がある。このような外注(請負契約)との相性の悪さが普及に至らない原因の一つとなっている。根本的な解決策としては外注から内製化へとシフトすることが挙げられるが、組織改革や人材の確保が求められるため時間を要する。短期的な解決策としては、スコープが一定程度明確となる上流工程(要件定義など)までを一般的なウォーターフォール開発※3で行い、以降の下流工程をアジャイル開発で行うハイブリッド型開発の採用が考えられる※4

日本企業がアジャイル開発の導入を通じてDXを推進していくためには、上記のような課題を解決した上で、まずはリスクの低いプロジェクトから積極的に導入していくことが重要である。そして成功体験を少しずつ重ねていく中で、日本人がモノづくり文化で培ってきた精神(密な対話・三現主義)を効果的に発揮できれば、日本においてもアジャイル開発が加速的に普及すると考えられる。

※1:平鍋健児(2016)「変化を味方につけるアジャイル開発」 SEC journal Vol.11 No.4

※2:「アジャイルソフトウェア開発宣言」https://agilemanifesto.org/iso/ja/manifesto.html(閲覧日:2020年7月27日)

※3:上流工程から順番に開発を進め、後戻りを前提としない開発方式

※4:英 繁雄・奈加健次・平岡嗣晃・前川祐介・長瀬嘉秀・関西電力(2013)「ハイブリッドアジャイルの実践」リックテレコム

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