東京電力福島第一原子力発電所の事故後、エネルギー政策における原子力の位置づけおよびその利用の議論では、原子力利用に対する「社会からの信頼の確保」が議論の出発点として位置づけられてきた。こうした中、中長期的なエネルギー政策の指針「エネルギー基本計画」の改定に向けた議論が始まっている。焦点となるのは2040年の電源構成と、原子力発電、再エネなどで脱炭素を加速できるかだ。本コラムでは、原子力利用を考える上で重要な「信頼」に焦点を当て、原子力利用政策の議論の進め方について考えたい。
※1:エネルギー基本計画は、2003年に初めて策定され、その後おおむね3年ごとに見直しが行われている。現在最新の第6次エネルギー基本計画は2021年10月に閣議決定された。
※2:GX実行会議「GX実現に向けた基本方針~今後10年を見据えたロードマップ~」を指す。(令和5年2月10日閣議決定)
https://www.cas.go.jp/
※3:原子力委員会「原子力利用に関する基本的考え方」を指す。
https://www.aec.go.jp/
※4:「第6次エネルギー基本計画」より。
https://www.enecho.meti.go.jp/
※5:提言 カーボンニュートラル時代の長期的な原子力利用の在り方(ニュースリリース 2022.10.7)
※6:原子力事業は、原子力施設が立地する地域の住民等が国のエネルギー政策に協力することと引き換えに、経済的なメリット等を享受するという構造がある。すなわち、地域の住民等と政府の信頼関係の構築・維持はいうまでもなく重要であるが、本アンケートでは原子力施設立地県と非立地県の間で回答の傾向に大きな差異はみられなかった。