マンスリーレビュー

2017年9月号トピックス2スマートシティ・モビリティ

空港コンセッションを成功に導くために

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2017.9.1

次世代インフラ事業本部磯野 文暁

スマートシティ・モビリティ

POINT

  • 空港経営の効率化を目的とする「空港コンセッション」が進んでいる。
  • 収益拡大のため、周辺地域の魅力を高め旅客需要を拡大する必要がある。
  • 空港経営改革を成功させる鍵は持続的な地域との連携。
空港の運営権を民間に売却するコンセッション事業が進み始めた。国管理空港では2016年7月に仙台空港で事業が開始され、現在、高松空港、福岡空港、熊本空港と北海道内の7空港でマーケットサウンディング※1や募集・審査の手続きが進められている。中長期的に安定した収益が見込める新事業として、建設、商社、小売、金融、不動産、運輸など各業界が空港運営ビジネスに参画する見通しである。

空港コンセッションの特徴は、民間の運営事業者が滑走路などの航空系施設と、空港ビルなどの非航空系施設を一体運用する点にある。通常、空港ビジネスでは航空系事業である航空機の着陸料などを引き下げて新規路線の誘致や集客を図り、非航空系事業の空港ビル物販などで収益の補填・拡大を図る経営を行う。しかし、人口減少時代に突入した今、中長期的な路線維持・拡大のためには、計画的な集客が必要である。

空港の周辺地域を訪れる旅客の需要を本格的に創出・拡大するために、地域関係者との連携・共同を強化することも不可欠である。近年、訪日外国人旅行者の急増や格安航空会社(LCC)の参入・拡大など、空港コンセッションには追い風が吹いている。この追い風を持続させるには、空港と地域が一体となりLCCなどの航空会社を誘致したり地域の魅力を発掘したりする必要がある。空港と地域の連携や、ブランディング、プロモーションなどのマーケティングの巧拙が空港コンセッション成功の鍵を握っている。

1990年代後半に民間経営へ移行したオーストラリアのゴールドコースト空港も、空港と地元自治体や観光協会などが連携・共同してさまざまな取り組みを実施してきた。例えば、国際航空路線の開設商談会に空港と地域が共同で参加して航空会社の誘致を行ったり、空港の経営陣も地元観光協会の役員を兼任して観光プロモーションに尽力したりすることで、同空港の旅客数・路線数の急速な拡大に貢献した。

日本においても空港コンセッションを持続的な成長に導くためには、空港経営の改善と多様な関係者が一体となった地域おこしを両輪とする必要があるだろう。

※1:公共側が幅広く民間事業者の意見を募集する投資意向調査。

[図]空港と地域の連携イメージ