マンスリーレビュー

2017年9月号トピックス5デジタルトランスフォーメーション

賢いAIが導くゲームチェンジ

同じ月のマンスリーレビュー

タグから探す

2017.9.1

先端技術研究センター澤部 直太

デジタルトランスフォーメーション

POINT

  • 2030年頃に調理ロボットなどの賢いAIプロダクトが登場。
  • 生産性と余暇時間の変化が供給者の「ゲームチェンジ」をもたらす。
  • ゲームチェンジの流れを読むには、AI革命の節目を見極めることが重要。
近年の人工知能(AI)技術の飛躍的向上(AI革命)により、ビジネスや生活のさまざまな分野で「賢い」AIプロダクトが生まれつつある。2000年前後に始まったICT革命では、必ずしも作業効率化が時間短縮に直結せず生産性の向上が十分達成できなかった。しかし、AI革命では人間が行ってきた作業を完全に自動化することで、生産性の飛躍的な向上が期待できるようになった。身近なところでは、2030年頃に登場が期待される賢い調理AIロボットや掃除洗濯AIロボットが、家事の労働時間を大きく短縮してくれる可能性を秘めている。

調理AIロボットでは、精密操作が可能なロボットハンドを動かすAIに、有名シェフの技を学習させる取り組みが進んでいる。現在は試作段階だが、2030年頃には一般家庭に普及し、有名料理店の味を自宅にいながら時間をかけずに楽しめるようになる。家庭への普及が進めばキッチンに立つ時間は大幅に減る。家庭で食事する「内食」の増加に伴い、外食のために移動する時間も節約でき、「食」を純粋に楽しむ時間はさらに増える。ホームパーティなどを通じて家族や仲間とコミュニケーションを図る機会もますます多くなるだろう。

今後さまざまな分野でのAIやロボットの活躍が期待され、将来は大きな社会的変化を生み、やがて製品やサービスの主要供給事業者が入れ替わるような「ゲームチェンジ」も促す。調理AIロボットの場合は、食品の購入から廃棄までを自動化するような新製品・サービスが提供可能な、新興の住宅メーカーやシステムキッチン事業者、家電メーカーの市場参入が、早まるかも知れない。外食中心だったライフスタイルを内食型にシフトする家庭が増え、ファストフード・食品デリバリー事業者のビジネスが脅かされる可能性が高まる。

調理AIロボットに限らず賢いAIプロダクトの登場は業界にゲームチェンジを起こす可能性がある。既存の業態にこだわらず、新しい波に乗るタイミングを逃さないことが重要である。AI革命の時代に自らが主要な供給者(プレイヤー)となるには、ブレークスルーを生み出すAIプロダクト登場の節目を見極めることが求められる。
[図]AIロボットの進化が導く社会的変化とゲームチェンジ