「おいしさ」のデジタル・ディスラプション

2021.5.1

営業本部木附 誠一

スマートシティ・モビリティ

POINT

  • デジタル化が「おいしさ」の価値観に大きな変化をもたらす。
  • 個人の好みをデータ化すれば健康な食生活や食品ロス削減につながる。
  • 食文化の多様な関西は「いのち輝く」万博の舞台としても最適。

伝わりにくい「おいしさ」

食べ物の「おいしさ」は五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)が複雑に絡み合った感覚である。食に関するテレビ番組からは、視覚と聴覚以外は感じ取ることはできない。触覚や味覚、嗅覚はリポーターの言葉から連想するしかない。

こうした言葉によって、風味や食感などが語られる。しかし、実際のおいしさは個人の好みに左右されるだけでなく、食のシーンや当人の年代、そのときの健康状態によって大きく変化する。自分が感じたおいしさを他人と分かち合うには、非常に分厚い壁が存在しているのである。

デジタル化による「創造的破壊」

この壁は、デジタル化によって「創造的破壊」とも言うべきディスラプションが進行していることで、壊されつつある。個人で異なるおいしさを要素ごとにスコア化するなどして、味の再現性を高める試みが始まっているからだ。

背景の1つには、世界的な高齢化の進展で健康寿命の延伸が迫られている事情がある。個人が何においしさを感じるかという嗜好性をデータ化しておけば、例えば健康のために塩分を抑えた料理を出したとしても、VR(仮想現実)を活用した視覚と嗅覚の相互作用などを通じて、その人が好む塩味を感じさせることが可能になる。

代替食材で好みの味を再現できるようにすれば、特定の食材の消費を抑えて食品ロスも削減できる。環境への負荷が大きい牛や豚などに代えて培養肉などを活用する余地も広がる。食の満足感を得ながら健康的な食生活を実現するための味覚センサーなどデバイスの技術開発も進展している。

「いのち輝く」に向けて

万博は、食ともなじみが深い。1970年の日本万国博覧会(大阪万博)に出店された「ケンタッキー・フライド・チキン」の実験店舗は、日本で最初のファストフード店となった。最近では、2015年ミラノ国際博覧会(ミラノ万博)で日本の食が大変評判になった。

そして2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」である。食文化が豊かな関西には、保存の利く発酵食品や季節の風情を盛り込んだ京料理など多彩なコンテンツが存在する。21世紀にふさわしい健康づくりやQOL向上につながる革新技術を駆使して、いのちを輝かせる、新たな食の可能性を提示する舞台になりえる。

おいしさのデジタル化によって再現性を高めれば、各個人にパーソナライズ化された、付加価値の高い食を提供できる。自分の健康状態に合った世界中の料理を自宅に居ながらにして味わえたり、日本食のおいしさを世界中の人々に届けられる「時空を超えた食体験」も現実のものとなる。

当社としても、食のパーソナライズ化やBX(バイオトランスフォーメーション)※1によるデジタル・ディスラプションを通じた、おいしさの新たな価値創造を提案したい。

※1:革新技術による変革として当社が提唱している「3X」の1つ。ほかにデジタルのDXと、コミュニケーションのCXがある。

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