マンスリーレビュー

2017年1月号トピックス1地域創生デジタル・イノベーション

植物工場の特長を活かすビジネスモデルへの期待

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2017.1.1

地域創生事業本部伊藤 保

地方創生

POINT

  • 国が本格的に支援し始めて10年近くたつが、植物工場の半数以上は経営不振。
  • 経営不振の一因はマーケティング不足にあり。
  • マーケットイン(顧客志向)の発想で、農業活性化による地方創生促進を。
植物工場は、閉鎖した空間で植物の生長に最適な条件を再現し、植物の力を最大限伸ばして、安全で均質な農産物を短期間かつ安定的に生産するシステムである。

2008年度に政府が「3年で植物工場数を3倍、コストを3割削減」という政策目標を掲げてから約10年がたった。特に太陽光に依存しない人工光利用型植物工場は、世界に先駆けて日本が事業化した栽培方法で、「定時・定量・定価・定品質」を武器に、その普及拡大と海外展開が積極的に支援された。政策支援の効果もあり2008年度末に34カ所だった植物工場の数は、2015年度末には190カ所を超えた。

ところが、このうち半数以上の事業者が赤字経営となっており、2015年には、業界有数の事業者が倒産した事実もある。経営不振の要因の一つには植物工場で生産する農産物と販売側が望む農産物の量と質が一致しないという問題が挙げられる。

とすれば、必要なのはマーケットイン(顧客志向)の発想である。従来型農業の露地栽培では、種まきから収穫までに数カ月を要し、市場のニーズに合わせた臨機応変な対応は困難だった。しかし植物工場は毎日植え、収穫できる。つまり農業というより工場生産に近いのである。このため、日々の売り上げをチェックし、常に「どこで」「誰に」「何を」売るかを考え、それに基づいて生産することが可能である。

日本と並んで植物工場先進国であるオランダでは、流通段階を簡素化し、主たる販売先であるドイツやフランスの小売りバイヤーを通じて、市場ニーズがダイレクトに生産者に伝わる仕組みを構築している。

国内でも私鉄系スーパーの一部では、首都圏で生産し食味と食感にこだわったレタスが、398円(1袋約130グラム)でも売り切れたという。生産コストがかかっても高品質や高付加価値の商品は、売り方と売り場さえ考えれば売れるという好例である。

日本農業発展のためには、露地栽培と補完し合い、植物工場の特長を活かしたビジネスモデルの改善・確立が急務である。マーケットインの発想を取り入れ、高く売れる商品をタイムリーに供給することが植物工場の発展、さらには地方創生を促すだろう。
[図]人口光利用型植物工場の経営状況

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