マンスリーレビュー

2017年1月号トピックス4スマートシティ・モビリティヘルスケア

健康・医療をテーマとした関西都市圏の創生

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2017.1.1

関西センター崎 恵典

スマートシティ・モビリティ

POINT

  • 経済面の停滞が続く関西で、健康・医療分野は成長エンジンになり得る。
  • そのために圏域の総合力を高め、チャレンジを促進し、働き方を変えるべき。
  • 2025年万博誘致テーマ「健康・長寿への挑戦」を体現する都市圏を目指そう。
関西では、高度成長期以降の構造転換の遅れや近年の家電産業の失速などにより、経済面での停滞が続いている。また、三大都市圏で最も高齢化率が高く健康寿命も短いという構造的な課題を抱えており、地盤沈下が進んでいる。その中で今、「健康・医療、ライフサイエンス」分野が、成長エンジンとして期待されている。

この分野の関西のポテンシャルは高い。江戸時代の日本医学・医薬産業の発祥地であり、世界トップクラスの大学・研究機関を有する。また大阪北摂エリアや神戸医療産業都市の国際総合戦略特区/国家戦略特区指定などで重層的な取り組みが進んでいる。今後10年は、健康長寿関連の大型プロジェクトも連続して予定されている(図)。

このポテンシャルを生かし、「元気に活き活きと生きる=ウェルネスを実現」するためには、二つの観点が必要である。一つ目は、さまざまなサービスや事業が圏域から生まれ、実際に圏域人口の健康増進に寄与することである。実現には、①圏域全体でのこれらプロジェクトをつなぎ総合的なコーディネートが行われること、②それぞれのプロジェクトから健康・医療に関する新たな事業やサービスが生まれるようなイノベーション創出の仕組みを都市に組み込むことが必要である。

二つ目は、健康寿命が延びたときに「思う存分に生きる・活動する」ための環境が整っていることであり、③現役世代のうちから健康長寿を意識した活躍の基盤を整えることである。例えば50歳からの兼業奨励や企業に在籍したままの活躍出向奨励など、65歳以降の「わくわくするような」セカンドライフ実現に向けた働き方改革を産業界挙げて行うことが重要である。

人々がわくわくするところに、必ず新しい産業は芽吹いてくる。課題先進地域である関西で、①~③のようにまち・ひと・しごと全体にわたるイノベーション創出を政官学産民が総出で果たすことが、関西・大阪を変え、ひいては日本を元気にする。現在、2025年の万博誘致に向けた検討が進んでいるが、関西・大阪は、そのテーマである「人類の健康・長寿への挑戦」を自ら体現する都市圏の創生を目指すべきである。
[図]都市基盤としてのイノベーション創出の仕組み

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