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新型コロナウイルス(COVID-19)危機対策:分析と提言ヘルスケア・ウェルネス次世代インフラ

新型コロナウイルス人流分析レポート1:都道府県に着目したGWにおける全国移動の把握

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2020.5.14

次世代インフラ事業本部坂井浩紀

盛田太郎

中條 覚

新型コロナウイルス(COVID-19)危機対策:分析と提言

特定警戒都道府県における県間移動はGW中一部増加

政府は、2020年5月末までの延長を発表した緊急事態宣言に関し、一部地域の緊急事態宣言解除を検討する考えを示した。今後、各地域が主導する施策への移行が進むと思われる。
三菱総合研究所が行ったゴールデンウィーク(GW)期間中の県間移動の分析によると、GW前の休日と比較し、期間中の全国での移動は全般的には抑えられたものの、特定警戒都道府県における県間移動は、関東圏では10%程度増加、中部圏および近畿圏ではおおむね横ばい、福岡県及び北海道が減少となっていることが分かった。
解除された地域とそれ以外の地域間での移動が増加してしまうと感染拡大再発につながりかねない。県間移動は今後も継続的に注視し、解除地域外との移動は継続的に抑制するなどの対策が必要と考えられる。
以下で、今回の分析内容の詳細を述べる。

大都市圏からの伝搬による感染者数の広がり

政府は、都市部からの人の移動などによりクラスターが各地で発生し、感染拡大の傾向がみられることから、緊急事態宣言の対象地域を4月16日に全都道府県に拡大した。
厚生労働省が公表した都道府県別感染者数のデータを用いて、3月下旬からGWにかけての感染者の累積を可視化した。全国における感染状況を見ると、三大都市圏(東京都、愛知県、大阪府およびその隣接府県)から伝搬するように感染者数が増加する傾向が見られる。
図1 都道府県での感染者数の累積
図1 都道府県での感染者数の累積
出所:厚生労働省資料※1より三菱総合研究所作成
※詳細はこちら(動画)

人流推定データを用いた移動の分析

具体的には、人流の推定データとして、LocationMind株式会社によるLocationMind xPOPのデータ※2を活用した。本データでは、ある滞留(一定時間移動がない状態)から次の滞留までの移動を「1移動」として計上している。
分析期間は、GW前の土日(2020年4月18日、19日、25日、26日)およびGW中(2020年4月29日~5月6日)である。
全国の分析には、8地方(北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州沖縄)を基本とし、ここから沖縄県は分離した区分を用いた。また、感染者数の多い特定警戒都道府県(13都道府県)に着目した分析も行った。移動は、県内移動と県間移動(隣接県間移動とそれ以外の長距離移動)に分類した。なお、隣接県は、国土交通省が用いている「隣接する都道府県※3」の定義である、橋梁およびトンネルでの隣接を含む地続きの隣接都道府県を用いた。

GW前の休日と比較し県内移動は横ばい、県間移動はおおむね減少

GW前の休日に対するGW中の県内移動と県間移動(隣接県間移動および長距離移動)の比率について、全国の状況を表1に示す。
県内移動は、いずれの地方もGW前の休日と比較して横ばいもしくは微増であった。一方、県間移動は、関東が10%程度の増加、中部および近畿がおおむね横ばいであり、それ以外の地方では減少していた。全国でみれば、県内移動はおおむねGW前の状況を継続し、県間移動は関東、中部および近畿を除いて減少したと言える。なお、全国の移動数全体に占める県間移動の割合は4%であり、県内移動が96%を占める。

特定警戒都道府県とその他地域間の移動は抑制状況にばらつきあり

次に、13の特定警戒都道府県における状況を分析した(表2)。県内移動は、全国の傾向と同じく、GW前の休日と比較して横ばいもしくは微増であった。一方、県間移動は、関東圏南部(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)が10%程度の増加、茨城県、中部圏(愛知県、岐阜県、石川県)、近畿圏(大阪府、京都府、兵庫県)がおおむね横ばい傾向であり、福岡県が10%程度減少、北海道が25%程度減少となっていた。
表1  GW中の移動の内訳
(GW前休日に対する比率、全国)
表1  GW中の移動の内訳(GW前休日に対する比率、全国)
表2  GW中の移動の内訳
(GW前休日に対する比率、特定警戒都道府県)
表2  GW中の移動の内訳(GW前休日に対する比率、特定警戒都道府県)

GW中の移動の内訳(GW前休日に対する比率):GW前の休日における移動の1日当たり平均値に対する、GW中の移動の1日当たり平均値の比率

県内移動:都道府県を超えない移動

隣接県間移動:隣接県への移動

長距離移動:「県内移動」「隣接県間移動」のいずれにも該当しない移動

所:三菱総合研究所

一部地域の緊急事態宣言解除へ向け県間移動の継続的な注視が必要

以上の分析により、GW中は、GW前の休日と比較して移動の自粛がおおむね継続できていたと考えられる。しかし、感染者が多い特定警戒都道府県においては、GW中の県間移動が横ばいもしくは微増であった地域が複数存在している。
一部地域において緊急事態宣言が解除されると、地域の実情にあわせて、各自治体で感染防止対策を展開していくことになると考えられるが、状況によっては、移動状況を踏まえた自治体間での連携が必要になる。
解除された地域内では移動も多くなると考えられるが、これらの地域で県間移動が増加に転じた場合には、解除地域内で感染者数の抑制がなされた状況下であっても、地域外における感染の広がりが持ち込まれる可能性が考えられる。少なくとも、解除が行われた地域とそれ以外の地域間での移動は、今後も継続的に注視することが必要だ。解除地域外の感染状況によっては、解除地域外との間の移動は継続的に抑制することも必要となるかもしれない。

次回は、各自治体の今後の状況に応じた移動対策へ示唆を得るため、全国における対前年比や移動時の交通手段の推定などについて、より詳細な分析や考察を行う予定である。


謝辞
本分析に際しては、LocationMind株式会社の桐谷直毅CEO、柴崎亮介CTO、金杉洋氏、宮澤聡氏をはじめ、皆さまから多大なる協力をいただいた。ここに記して感謝の意を表したい。

※1:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について」において公表された「新型コロナウイルス感染症(国内事例)の状況(PCR検査陽性者数の累積)(単位:人)」、厚生労働省が対前日比を公表開始した2020年3月18日から5月6日までのデータ。なお、3月27日までは、「新型コロナウイルス感染症(国内事例)の状況(累積)(無症状病原体保有者を除く)(単位:人)」。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00086.html(閲覧日:2020年5月12日)

※2:LocationMind xPOPのデータは、NTTドコモが提供する「ドコモ地図ナビ」サービスのオートGPS機能利用者より、許諾を得た上で送信される携帯電話の位置情報を、NTTドコモが総体的かつ統計的に加工を行ったドコモ地図ナビ統計情報を基に作成されたデータを使用。位置情報は最短5分ごとに測位されるGPSデータ(緯度経度情報)であり、個人を特定する情報は含まれない。

※3:国土交通省「『隣接する都道府県』について」
https://www.mlit.go.jp/tec/nyuusatu/hattyu/rinsetu.pdf(閲覧日:2020年5月12日)
ただし、本分析では岡山の隣接県は島根ではなく鳥取とした。