AI(人工知能)・ロボットの社会影響を語るとき、多くの人が思い浮かべるのは、英国オックスフォード大学マイケル・A・オズボーン准教授の労働代替予測であろう。AI・ロボットは、現在の単純労働者の仕事を奪い、街には失業者があふれる。産業が生み出す富は、AI・ロボットに投資をする投資家に集中し、国家間、国家内で貧富の差が拡大し、その対策としてベーシック・インカムなどの新たな富の分配施策が必要となる。これが一つの未来予測シナリオである。
オズボーンの、単純労働からの代替は、一面の真実であろう。既に米国において、ファストフードの注文の機械化などに代表されるような、「絵に描いたような」労働代替が始まっている。しかしながら、機械による完全な労働代替、いわゆるシンギュラリティ(技術特異点)が実現するまでには、技術的に見る限りはまだかなりの時間を要する。
代替が徐々に浸透していく期間は、おそらくもう少し複雑な過程をたどる。例えば、機械による労働代替が進んでも人間同士のコミュニケーションは代替が難しい分野であり、対人サービスを伴う仕事において、人が果たす役割が、高度なコミュニケーションを伴う“付加価値型サービス”にシフトするだろう。また、ICTの力で十分なデータが得られるようになったホワイトカラーや研究者は、それを使ったよりクリエイティブな仕事にシフトしていくことだろう。
さらに、第一次産業革命では、工場労働者という新たな就労形態が生まれ、産業革命によって失われる職業もある一方で、トータルでは雇用は大きく増大した。第四次産業革命でも、これまでに無い産業・職業は当然生まれてくるはずだが、それらはまだ姿を見せていない。本コラム後半でも幾つかの新たな産業の例を予想したが、現時点で全ての新たな産業を予測するのは不可能である。
こうした労働と産業構造という二つの面の変化を考えれば、現段階では一概に労働代替による悲観的な予測ばかりを先行させるのは、やや偏った見方といえるだろう。当面進むのは、条件が整ったところからの虫食い的な労働代替と、それを避けるように進む人間の仕事の高度化、新たな産業の登場による雇用創造であり、これらが渾然一体に進む世の中を想定する必要がある。企業・産業の新陳代謝(入れ替わり)に対する社会的な備え、将来の雇用変化に対応できる教育制度などを整えつつ、新たな時代に適応する必要がある。
オズボーンの、単純労働からの代替は、一面の真実であろう。既に米国において、ファストフードの注文の機械化などに代表されるような、「絵に描いたような」労働代替が始まっている。しかしながら、機械による完全な労働代替、いわゆるシンギュラリティ(技術特異点)が実現するまでには、技術的に見る限りはまだかなりの時間を要する。
代替が徐々に浸透していく期間は、おそらくもう少し複雑な過程をたどる。例えば、機械による労働代替が進んでも人間同士のコミュニケーションは代替が難しい分野であり、対人サービスを伴う仕事において、人が果たす役割が、高度なコミュニケーションを伴う“付加価値型サービス”にシフトするだろう。また、ICTの力で十分なデータが得られるようになったホワイトカラーや研究者は、それを使ったよりクリエイティブな仕事にシフトしていくことだろう。
さらに、第一次産業革命では、工場労働者という新たな就労形態が生まれ、産業革命によって失われる職業もある一方で、トータルでは雇用は大きく増大した。第四次産業革命でも、これまでに無い産業・職業は当然生まれてくるはずだが、それらはまだ姿を見せていない。本コラム後半でも幾つかの新たな産業の例を予想したが、現時点で全ての新たな産業を予測するのは不可能である。
こうした労働と産業構造という二つの面の変化を考えれば、現段階では一概に労働代替による悲観的な予測ばかりを先行させるのは、やや偏った見方といえるだろう。当面進むのは、条件が整ったところからの虫食い的な労働代替と、それを避けるように進む人間の仕事の高度化、新たな産業の登場による雇用創造であり、これらが渾然一体に進む世の中を想定する必要がある。企業・産業の新陳代謝(入れ替わり)に対する社会的な備え、将来の雇用変化に対応できる教育制度などを整えつつ、新たな時代に適応する必要がある。