さらに、日本のウェルビーイングの状況をさまざまな角度から分析するため、36のウェルビーイング指標に関する「重要度」「満足度」「実現度」を生活者1万人アンケートで調査した。その結果、日本の生活者は総じて「心身の健康」や「所得・資産」といった生活の自立にかかる要素、そしてセーフティ(安全)やサステナビリティ(持続可能性)を重視する傾向が明確になった。また、生活満足度については、シニア層が圧倒的に高い反面、ミドル層(40代・50代)では生活への不満が大きい状況が浮かび上がった。ウェルビーイング向上に対する個別指標の影響度を分析した結果では、「将来への希望」が最も大きな影響を持つこと、「所得と資産」「精神的な健康」「財政の持続性」など、身近な生活や社会の基礎的インフラに関わる指標の影響度が大きいことなどが判明した。
また、生活者を価値観と置かれた状況でセグメント化した分析では、生活満足度が低く個人の生活を重視する層におけるウェルビーイングが低く、社会からの恩恵が受けられず将来への希望が感じられていない状況が明確に表れた。一方、社会との関係を重視する層においては、「財政の持続性」や「地球環境の保全」といったサステナブル関連の指標の改善がウェルビーイング向上に大きな影響を与えることがわかった。社会全体のウェルビーイングを高めていくにあたり、社会からの恩恵が受けられない層に手を差し伸べつつ、ゆとりのある層については社会貢献の意識を引き出していくなど、生活者の価値観と置かれた状況に応じたきめ細やかな施策を講じることの重要性が示唆される。