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2020年8月号トピックス3次世代インフラ

地域で支える持続的な公共交通の可能性

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2020.8.1

次世代インフラ事業本部外山 友里絵

次世代インフラ

POINT

  • 持続可能な公共交通サービスに向け、経営維持の工夫が必要。
  • 「計画」と「運行」に関して、行政と事業者の役割分担の見直しを。
  • 地域に依存しないノウハウや技術は、横展開で市場拡大のチャンス。
日本の乗合バス事業者は、特に地方部では約9割※1が赤字となっており、今後のサービス維持に対する危機感が高まっている。新型コロナウイルス感染拡大の危機下のような非常時においても、社会インフラの機能を担うべき公共交通事業者にとって、今後の安定的なサービス維持に向けた対策が急務である。

日本では一般に、地域に根差した公共交通事業者が、バスルート・時刻表設定などの「運行計画」と実際の「運行業務」の両方を一手に担ってきた(図)。このため多様なサービスを提供できる一方、設備の維持管理に関わる固定費の負担が重くなる傾向がある。民間企業でありながら公共性を保つ必要もあり、安易な減便・廃線による経営工夫がしにくいという課題があった。欧州では公共交通サービスを、「地域ごとに検討するべき部分」と「地域横断的に『汎用性』をもたせる部分」に分けて、公共交通事業者と地方公共団体との責任分担をしている国が多い。

具体的には、地域に根差した計画づくりと交通サービスの運行は異なる専門性と認識され、前者は地方公共団体の計画部局、後者は公共交通事業者が担う。この際、地方公共団体は自らが設定したルート・時刻表設定をもとに、公共交通事業者と運行本数ベースで委託契約を結ぶ。事故数や定時運行率などに対しインセンティブを付与するケースもあり、事業者の責は利用者増減に伴う運賃収入増減ではなく、定時運行と安全運行の実現にフォーカスされる。事業者は地域に依存しない安全性と定時性のノウハウをもとに市場を横展開でき、車両・車両艤装(ぎそう)品※2などの調達にもコストメリットが働く。

一方、地方公共団体側のメリットとして、行政方針の迅速なサービスへの反映が挙げられる。欧州では過去に首長が政策方針を発表した翌日から路線バスの夜間便を間引いたり、道路の車線を臨時に自転車道化した例もあった。こうした役割分担を日本に適用する場合は、各地方公共団体で交通計画を立案できる人材育成の仕組みをつくるとともに、地方公共団体が公共交通事業者のパフォーマンスを適正に評価・モニタリングできる指標を明確化することが必要だろう。

※1:日本バス協会「2019年度版日本のバス事業」。

※2:車両に組み付ける装備品のこと。

[図]日本と欧州における乗合バスや鉄道の運行・計画体制の違い

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