マンスリーレビュー

2021年4月号特集4ヘルスケアデジタルトランスフォーメーション

科学的エビデンスに基づく介護現場のPDCA改革

2021.4.1

未来共創本部岡田 圭太

ヘルスケア

POINT

  • 高齢化社会の今後にとって科学的介護の実践が不可欠。
  • 科学的介護の基幹データの整備に伴う現場負担に課題。
  • PDCA推進に向け全利害関係者の内発的動機発揚を。

科学的介護の取り組みが本格化

日本の高齢化問題を考える上で、要介護者の自立支援・重度化防止と介護需給の逼迫の問題解消は極めて重要な課題といえる。投入リソースに対する成果を高めていく必要がある。

厚生労働省は科学的エビデンスに基づく介護(科学的介護)の一環として、データに基づく継続的な業務改善(PDCA)※1の推進を目指している。これにより介護保険サービスの品質向上を実現したい考えである。

2021年4月の介護報酬改定では、科学的介護情報システムに基づきPDCAを推進する施設・事業所に対して加算する制度が新設。科学的介護の取り組みはスタートラインについた。

現場でのデータ入力に課題

今後は施設・事業所でも、データのフル活用が求められる。ただし、自社の経営にも資するところがなければデータの蓄積・活用は進みにくい。スタッフの労力を勘案すれば、計測(評価)・入力などのオペレーションが手作業であることへの配慮も求められる。ただでさえも人手不足。負担軽減の対策が急がれる。

ここにテクノロジーの力を活用したい。データ収集にIoTはやはり有効である。機械化や半自動化の余地は十分にあり、精度向上も期待できる。

確かに、普及初期段階にある製品群は費用対効果を認識されないこともあるし、オペレーション変更にスタッフが抵抗感を覚えることもある。しかし、本当に価値があるイノベーションは時間経過とともに必ず実装がかなう。継続的な取り組みが求められる。

全ステークホルダーの動機づけを

科学的介護の追求は、社会保障費の増大と介護人財不足という社会課題の解決を促す。サービス品質向上という形で要介護者の便益に通じ、将来の研究開発の礎ともなる。現場における経営のPDCAの確立にも寄与する。円滑な実践に向けては介護に関わる全利害関係者(ステークホルダー)への配慮が求められている。

とりわけ介護スタッフの動機づけは配慮されるべき重要課題といえる。科学的介護の成果を実感する手応えをいかに作りだすかが課題だ。例えば、スタッフのモチベーションは向社会的動機(要介護者への貢献実感など)と内発的動機(自身の処遇改善など)の双方が支える。これらが現場のPDCAの回転を速めるトリガーとなる。

地域における施設・事業所の顧客獲得と人財獲得の競争力にも直結する。こうした可能性を経営者が理解した上で、スタッフへの丁寧な説明もなされるべきである。眼下の課題に臆することなく想像の壁を越えることで、未来に受け継がれるインパクトが社会に実現されるだろう。

※1:Plan (計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の繰り返しにより業務改善を行うマネジメント手法。

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