マンスリーレビュー

2022年10月号トピックス1ヘルスケアデジタルトランスフォーメーション

介護予防の新展開オンライン型運動教室

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2022.10.1

イノベーション・サービス開発本部木田 幹久

POINT

  • 高齢者にとって自立期間の長短は大きな問題。
  • 「オンライン型運動教室」に新たな層の参加が増える。
  • 幸せ時間延伸の鍵は社会参加を促す行動変容の誘発にあり。

コロナ禍でリアル対面型の運動教室が減少

運動が介護予防に有効であることは先進自治体の取り組みや先行研究などから検証されている。例えば当社分析では、兵庫県淡路市における運動参加者の自立期間※1の比率が有意に高い※2

しかし運動教室への参加率や継続率は、期待どおりには向上しない。こうした中、コロナ禍で自治体や住民の運営によるリアルな対面を伴う運動教室の活動は制限された。これまで以上に高齢者の健康への影響が懸念されている。

オンライン化がもたらした参加者の広がり

コロナ禍でのリアルな運動教室の代替策として登場したのがオンラインでの教室である。当社でも、介護予防によるウェルビーイング向上と社会保障費適正化を目指した政策提言や各種事業の一環として、「オンライン型運動教室サービス」の提供を開始した※3。「運動参加と継続を促す情報提供やサービスの組み合わせ」「運動教室参加による効果の見える化」などが可能といった特徴があり、すでに想定以上の効果が得られている。

オンライン化のメリットの一つは時間と場所に制限されずに参加できることである。これまで時間制約、あるいは初対面の人との交流に対する心理的ハードルから参加できなかった新しい層※4でも参加がしやすい。コロナ禍前と同様にリアルに参加したい人が、実際に教室に集まりオンライン参加するような運用も可能である。結果的に参加人数の増加だけでなく、より幅広い層の参加が進む。

参加者の笑顔で運動習慣が定着

当社サービスでは、運動習慣の定着を促す4つの取り組みを主に重視している。

① 運動指導者による適切な助言や楽しさの演出
② 体力測定による体力向上の見える化
③ 専門家相談や保健指導への誘導
④ 参加者の学習機会(健康講座)の提供 

オンライン化は①~④の各効果を高める。例えば参加者がオンラインで画面に顔を出したとする。画面に広がる笑顔が他の参加者に楽しさを与える力はリアルな運動教室以上である。測定結果のフィードバックや個別相談・指導などもオンラインの方が容易である。

リアルな交流が幸福な時間を誘発

オンラインとは別に、参加者の交流機会としてリアルな課外活動の時間を設けることも介護予防に有効である。神戸市では有志がワイン会やピクニックを実施。オンライン化がリアルな行動変容につながった好例といえる。オンラインに無縁だった高齢者が教室後に会話をネット上で弾ませるなど自然な交流が促される効果も確認されている。

オンライン化はコロナ禍の期間中に限られる代替策との見方もある。しかし当社の取り組みをはじめ、参加者拡大や運動習慣定着への効果を高める可能性は大きい。参加者間の新たな交流や社会参加の場の誘発にも有効である。健康寿命延伸、そして参加者の幸せ時間延伸のため、オンライン活用の可能性を広げていきたい。

※1:介護が必要な度合いが要介護1以下の期間。

※2:寿命に対する自立期間と非自立期間それぞれの比率を運動参加者と非参加者で比較。非自立期間は参加者の方が短かった。

※3:当社ニュースリリース(2022年8月4日)「科学的な介護予防のソリューションパッケージを自治体向けに提供」

※4:前期高齢者、男性など。