(1) 見え始めたポストコロナの新常態
新型コロナウイルスの感染拡大が始まって1年あまり、なお楽観は許されないものの、ワクチン開発・接種の開始とともに、感染症対策の出口は方向が見え始めた。が、より大切なのは、社会全体の急速なデジタル化・オンライン化に代表されるポストコロナの新常態をいかに速く実現し、浸透させるかである。新型コロナで残念ながら浮かび上がった日本の弱点を克服し、豊かで持続可能な社会に結びつけたい。
コロナ対策を契機に生まれつつある新常態は、医療の領域にとどまらない。3密回避によるさまざまな制約が、テレワークやオンライン学習、遠隔診療など平時には実現に時間を要する変革を、有無を言わさず一挙に実現・浸透させた。「やればできる」ことが証明されたのである。
かつ、日常生活の各面にわたる変化が複合されることで、衣食住を含む「暮らし」全体の姿が一変し、人々の価値観も変わる。ひいては積年の社会課題、地球・環境のサステナビリティへの解決をもたらす可能性もある。21世紀の新常態は、革新的技術である「3X」※1の急速な進展と相まって、複合的(コレクティブ)な大変革の契機となる。
コロナ対策を契機に生まれつつある新常態は、医療の領域にとどまらない。3密回避によるさまざまな制約が、テレワークやオンライン学習、遠隔診療など平時には実現に時間を要する変革を、有無を言わさず一挙に実現・浸透させた。「やればできる」ことが証明されたのである。
かつ、日常生活の各面にわたる変化が複合されることで、衣食住を含む「暮らし」全体の姿が一変し、人々の価値観も変わる。ひいては積年の社会課題、地球・環境のサステナビリティへの解決をもたらす可能性もある。21世紀の新常態は、革新的技術である「3X」※1の急速な進展と相まって、複合的(コレクティブ)な大変革の契機となる。
(2) 社会課題解決の新たな担い手
経済成長が国の命題であった20世紀には、成長がもたらした社会課題の解決もまた政府の仕事とされ、大量の資源と予算が投入された。量の成長が飽和し、質の改善が求められる21世紀には、情報と技術が課題解決の原動力となり、民間企業も大きな役割を担う。企業が担う以上、ビジネスとして成り立つ必要があり、経営上の優先順位も高まる。SDGsもESG経営も、そうした発想と軌を一にする。流れはさらに加速されるだろう。
経済社会が高度化するとともに、社会課題も、現象と原因の両面で複合・複雑化する。その解決も、画期的な一大発明というよりは、さまざまなアイデア、技術の組み合わせにより実現されるケースが増えている。担い手でも、既存の大企業よりも、スタートアップやNPOなど新興勢力の活躍が目立つ。
その一因は、AI・ロボット、クラウド技術の進展が、新しい機能・サービスを開発する期間やコストを大幅に圧縮したことにあり、小回りが利いて、失うものも少ないスタートアップ企業の活躍する場面が増えている。そこから生まれる、小さいが斬新な手法を組み合わせることが、大きな社会課題の解決にも結びつく。コストもリスクも少ないスモールスタートを起点に、その複合、コレクティブインパクトで大きな社会課題の解決を図るのが、もう一つの新常態となる。
経済社会が高度化するとともに、社会課題も、現象と原因の両面で複合・複雑化する。その解決も、画期的な一大発明というよりは、さまざまなアイデア、技術の組み合わせにより実現されるケースが増えている。担い手でも、既存の大企業よりも、スタートアップやNPOなど新興勢力の活躍が目立つ。
その一因は、AI・ロボット、クラウド技術の進展が、新しい機能・サービスを開発する期間やコストを大幅に圧縮したことにあり、小回りが利いて、失うものも少ないスタートアップ企業の活躍する場面が増えている。そこから生まれる、小さいが斬新な手法を組み合わせることが、大きな社会課題の解決にも結びつく。コストもリスクも少ないスモールスタートを起点に、その複合、コレクティブインパクトで大きな社会課題の解決を図るのが、もう一つの新常態となる。
(3) コレクティブインパクトの取り組み例
以下に、わが国で実現しつつあるコレクティブインパクトの実例をいくつか紹介する(図1)。
日本人の死因の第1位はがん、女性のがん罹患(りかん)数では乳がんが最も多い。その対策は、検診率向上による早期発見が鍵を握る。行政の検診促進策に加え、人に優しい検査機器の開発、罹患しても働き続けられる職場など、多くの要素が有機的に機能して大きなインパクトが生まれる(特集2)。
コレクティブインパクトを促進する仕組み作りも重要だ。一例として、住民の社会課題への行動を見える化し、地域通貨やポイント付与の動きがある。住民、地域の店舗、金融機関、ポイント管理団体などマルチステークホルダーにより共通の価値実現を支える基盤といえる(特集3)。
人手不足がネックとなっている介護事業では、ロボットやAIの活用と同時に、データを徹底収集・活用し、効果的な介護技術・科学的知見を共有知とすることが有効だ。要介護の発生を最少化し、効率化で生まれた時間を活用して、より人間的なケアの実現が可能となる(特集4)。
革新的技術は大きな社会変革につながる。リスクは大きいが実現のインパクトの大きい技術の開発にムーンショットと呼ばれる手法が注目されている(特集5)。
日本人の死因の第1位はがん、女性のがん罹患(りかん)数では乳がんが最も多い。その対策は、検診率向上による早期発見が鍵を握る。行政の検診促進策に加え、人に優しい検査機器の開発、罹患しても働き続けられる職場など、多くの要素が有機的に機能して大きなインパクトが生まれる(特集2)。
コレクティブインパクトを促進する仕組み作りも重要だ。一例として、住民の社会課題への行動を見える化し、地域通貨やポイント付与の動きがある。住民、地域の店舗、金融機関、ポイント管理団体などマルチステークホルダーにより共通の価値実現を支える基盤といえる(特集3)。
人手不足がネックとなっている介護事業では、ロボットやAIの活用と同時に、データを徹底収集・活用し、効果的な介護技術・科学的知見を共有知とすることが有効だ。要介護の発生を最少化し、効率化で生まれた時間を活用して、より人間的なケアの実現が可能となる(特集4)。
革新的技術は大きな社会変革につながる。リスクは大きいが実現のインパクトの大きい技術の開発にムーンショットと呼ばれる手法が注目されている(特集5)。