2021年の世界経済は、変異を続ける新型コロナウイルスの脅威にさらされつつも、全世界で累計90億本※1に上るワクチン接種の進展などにより、先進国を中心として経済・社会活動の正常化が進んだ。
世界のGDP(約90兆ドル)は2020年から一気に約5兆ドル増加※2、世界経済は需要不足から一転、供給不足に陥った。欧米では物価が上昇し、2021年11月の消費者物価は、米国で39年ぶり、ドイツでも29年ぶりの伸びを記録した。原油高を受けたガソリン価格の上昇にとどまらず、広範な品目の物価が上昇した。
供給不足と物価上昇の背景には、需要の急回復とともに、コロナ危機後に強まった3つの潮流が複合的に作用している。
第1はパワーバランスの不安定化だ。米中対立はトランプ前政権下での貿易対立から、バイデン政権下で自由や民主主義をめぐるイデオロギー対立へと発展した。経済安全保障上のレジリエンス(強靱(きょうじん)さ)を高める観点から、戦略物資の中核である半導体の輸出・投資規制の強化、サプライチェーンの内製化を進める動きが米中双方で進展した。半導体の主要生産拠点でもある台湾をめぐる政治的対立も半導体の供給懸念を強める一因といえる。
第2は資本主義の修正だ。近年、格差の拡大による社会の分断が欧米先進国を中心に大きな社会課題となっている。コロナ危機前から、既存の株主第一主義を企業自ら見直す動きが強まってきたほか、コロナ危機による一段の格差拡大を受けて、分断是正が政治的にも喫緊の課題となった。
こうした中、国民の団結を掲げて誕生したバイデン政権は、2021年3月以降、中所得層以下の世帯を対象に1人あたり最大1,400ドルの現金給付を執行。経済が回復傾向にある中での大規模な現金給付が、米国消費を一気に押し上げ、幅広い財で供給不足を招き物価上昇に拍車をかけた面は否定できない。需要が回復する中でも労働供給の戻りが鈍く、人手不足も深刻化した。
第3はサステナビリティ重視だ。気候変動の影響が顕著になる中、すでに136カ国がカーボンニュートラルを宣言した。しかし、その移行過程でゆがみもみられる。欧州は世界に先駆けて再生エネルギーへの電源シフトを進めてきたが、2021年は天候不順によって再エネの発電量が減少。代わりに需要が急増した天然ガスや原油の価格が急騰した。中国でも環境目標達成に向けた石炭火力発電の抑制が、深刻な電力不足と生産減少を引き起こした。
外交、政治、経済、技術、環境問題の相互の連接が強まる中で、世界の課題は複雑化し、企業活動にも影響をもたらすようになっている。例えば、安全保障における経済や技術の重要性はとみに高まっている。気候変動対策では国家の外交戦略、産業戦略と民間の企業活動も密接につながっていく。時代は、そうした変化局面にある。
世界のGDP(約90兆ドル)は2020年から一気に約5兆ドル増加※2、世界経済は需要不足から一転、供給不足に陥った。欧米では物価が上昇し、2021年11月の消費者物価は、米国で39年ぶり、ドイツでも29年ぶりの伸びを記録した。原油高を受けたガソリン価格の上昇にとどまらず、広範な品目の物価が上昇した。
供給不足と物価上昇の背景には、需要の急回復とともに、コロナ危機後に強まった3つの潮流が複合的に作用している。
第1はパワーバランスの不安定化だ。米中対立はトランプ前政権下での貿易対立から、バイデン政権下で自由や民主主義をめぐるイデオロギー対立へと発展した。経済安全保障上のレジリエンス(強靱(きょうじん)さ)を高める観点から、戦略物資の中核である半導体の輸出・投資規制の強化、サプライチェーンの内製化を進める動きが米中双方で進展した。半導体の主要生産拠点でもある台湾をめぐる政治的対立も半導体の供給懸念を強める一因といえる。
第2は資本主義の修正だ。近年、格差の拡大による社会の分断が欧米先進国を中心に大きな社会課題となっている。コロナ危機前から、既存の株主第一主義を企業自ら見直す動きが強まってきたほか、コロナ危機による一段の格差拡大を受けて、分断是正が政治的にも喫緊の課題となった。
こうした中、国民の団結を掲げて誕生したバイデン政権は、2021年3月以降、中所得層以下の世帯を対象に1人あたり最大1,400ドルの現金給付を執行。経済が回復傾向にある中での大規模な現金給付が、米国消費を一気に押し上げ、幅広い財で供給不足を招き物価上昇に拍車をかけた面は否定できない。需要が回復する中でも労働供給の戻りが鈍く、人手不足も深刻化した。
第3はサステナビリティ重視だ。気候変動の影響が顕著になる中、すでに136カ国がカーボンニュートラルを宣言した。しかし、その移行過程でゆがみもみられる。欧州は世界に先駆けて再生エネルギーへの電源シフトを進めてきたが、2021年は天候不順によって再エネの発電量が減少。代わりに需要が急増した天然ガスや原油の価格が急騰した。中国でも環境目標達成に向けた石炭火力発電の抑制が、深刻な電力不足と生産減少を引き起こした。
外交、政治、経済、技術、環境問題の相互の連接が強まる中で、世界の課題は複雑化し、企業活動にも影響をもたらすようになっている。例えば、安全保障における経済や技術の重要性はとみに高まっている。気候変動対策では国家の外交戦略、産業戦略と民間の企業活動も密接につながっていく。時代は、そうした変化局面にある。