マンスリーレビュー

2022年9月号トピックス2最先端技術

社会のデジタル化に合わせた公的統計の整備を

2022.9.1

スマート・リージョン本部勝本 卓

最先端技術

POINT

  • 2023年4月の次期基本計画施行でビッグデータ活用拡大を。
  • デジタル化実現に向けた戦略の一環としての統計整備が必要。
  • 行政データを統計として体系的に整備・公開することも重要。

5年に1度の見直しに向けて

公的統計の整備に関する方向性などをおおむね5年ごとに示す公的統計基本計画の次期計画施行が、2023年4月に予定されている。公的統計をめぐっては、携帯電話の基地局情報を用いた人流の把握や分析など、ビッグデータの統計的活用が存在感を示した。一方で、コロナ禍に対応した特別定額給付金の支給ずれ込みなどを受けて、行政デジタル化の遅れも指摘された。

公的統計は法的には、国民経済の健全な発展と国民生活の向上に寄与することを目的に、社会全体で利用される情報基盤と位置付けられる。

直近の動向を把握する動態統計に関しては、次期計画において、民間ビッグデータの積極的活用を進めることで速報性が向上し、内容も詳しくなると期待される。場合によっては民間が作成・公表を担うという議論があってもよいのではないか。

他方、大規模調査に基づく構造統計に関しては、行政記録情報や企業保有データの有効活用により、公的統計としての精度確保と官民コスト削減を両立させることが期待される。例えば現状で悉皆(しっかい)調査※1となっている経済センサスは、税務情報が活用できれば小規模企業まで調査する費用対効果は高くない上、企業会計ソフトとのAPI※2連携によりデータを収集することも考えられる。

オープン化をめぐる課題

こうした中、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」では、世界トップレベルのデジタル国家を目指す「包括的データ戦略」が2021年6月に取りまとめられた。同戦略では、データを「智恵・価値・競争力の源泉であるとともに、課題先進国である日本の社会課題を解決する切り札」と捉えている。その上で法人、土地、建物、資格など社会の基本データ(ベース・レジストリ)を整備するとともに、公開可能な行政データをオープン化することで価値を引き出すとされた。公的統計についても公開方法の改善が掲げられている。

しかし、同戦略が掲げるベース・レジストリの整備は、目標年次が2030年と、かなり先である。「国民経済の健全な発展と国民生活の向上に寄与する」上でどのような統計情報をオープン化すべきなのかといった議論もなされていない。

国民経済に資するデータ活用のために

公的統計は約300種類あるとされる。これに対し、デジタル庁による全府省庁の行政手続きの棚卸し結果によると、行政が保有するデータの種類は6.4万に達している。公的統計として指定されていないこれらの膨大なデータを、いかに国民経済に資する統計情報として整備し活用するかが、今後は重要である。

そのためビッグデータ活用に向けては包括的データ戦略を根拠に、保有者の提供拡大をより強力に促す仕組みを、次期の公的統計基本計画に位置付けていくべきだ。さらに、公的統計における体系的な統計情報整備を議論し、各種のバイアスを排除した加工・編集技術も活かすよう期待される。

※1:対象の全てを調べる手法のことで、サンプルに限定した標本調査に比べ手間がかかる。悉皆は「ひとつ残らず」という意味。

※2:Application Programming Interface ソフトウエアから機能やデータなどを利用するために定めた仕様やインターフェース。