SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)とは、2015年9月に国連で採択された国際社会が2030年までに達成すべき開発目標であり、17項目のゴールとそれらを実現するための169項目のターゲットにより構成される※1。SDGsは「誰一人取り残さない(No One Left Behind)」を重要なコンセプトに、先進国と途上国、さらには政府や国際機関だけでなく、企業を含むすべてのステークホルダーが取り組むべき目標として位置づけられている。国連の開発目標はこれまで政府および国際機関のODAなどによる途上国向け開発援助を主眼としてきた。これに対して今回の目標は気候変動や国内の所得格差拡大といった先進国・途上国の区別なく生じる課題にも目を向けるべきとの社会的論調を反映して、対象を拡大していることに特徴がある(図1)。
出所:国際連合広報センター(閲覧日:2019年4月1日)
https://www.unic.or.jp/
このように、政府、産業界、金融界と、多様な主体が企業にSDGsへの対応を要請しているなかで、企業はどのように対応すればよいだろうか。
SDGsへの対応に取り組まなければ、自社のレピュテーションの棄損、投資家からの評価の低下、将来的に国内外の政策・規制に対応できなくなる懸念など、経営上のリスクを抱えかねない。例えば、SDG7(エネルギーをみんなにそしてクリーンに)関連では、化石燃料関連企業から投融資を引き上げる動き(いわゆるダイベストメント)が欧米の機関投資家を中心に急速に拡大しており、運用資産総額にして900兆円(8兆USドル)ものインパクトを持つとされる※5。まずは、SDGsに取り組まないことで生じる経営上のリスクを正しく認識すべく、投資家や顧客等ステークホルダーの要請を理解し、優先的に取り組む項目を特定、実践していく必要があるだろう。
その上で、SDGsには、取り組まないことによるリスクだけでなく、取り組むことで得られる機会・便益がある点にも着目したい。
SDGsは解決すべき社会課題であり、社会のニーズでもある。これらを事業機会ととらえた場合、2030年までに全世界で新たに年間1300兆円(12兆USドル)の価値と3.8億件以上の雇用が創出されると試算されている※6。加えて、社会課題の解決に取り組むことで、企業としてのレピュテーション向上、ひいては他社との差別化を図ることもできる。SDGs起点で社会課題を読み解き、自社のリソースによる解決可能性を検討することで、事業と社会の持続可能性を同時に実現する機会が得られる。
※1 国際連合広報センターウェブサイト「2030アジェンダ」(閲覧日:2019年4月1日)
https://www.unic.or.jp/
※2 首相官邸ウェブサイト「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」(閲覧日:2019年4月1日)
https://www.kantei.go.jp/
※3 経団連ウェブサイト「『企業行動憲章』の改定について」(閲覧日:2019年4月1日)
http://www.keidanren.or.jp/
※4 年金積立金管理運用独立行政法人ウェブサイト「ESG投資」(閲覧日:2019年4月1日)
https://www.gpif.go.jp/
※5 DivestInvestウェブサイト(閲覧日:2019年4月17日)
https://www.divestinvest.org/
※6 持続可能な開発を目指す世界の企業約200社のCEOにより構成される非営利組織であるWBCSD(World Business Council for Sustainable Development:持続可能な開発のための世界経済人会議)による試算。
出所:WBCSD「持続可能な開発目標 CEO向けガイド」(閲覧日:2019年4月1日)
https://docs.wbcsd.org/