電力は安定供給の観点から需要と供給を常に一致させる必要がある。そこで、旧一般電気事業者に代表される発電事業者などは、太陽光・風力発電の出力変動に対応するため、発電量を容易に調整可能な火力発電所を、燃料費や固定費を市場から回収することのできない低価格の時間帯であっても稼働させておく必要がある。したがって市場価格が下がるほど発電事業者などの収益は悪化し、既設発電所の保守・点検といった維持管理や老朽化した発電所のリプレースが滞る恐れがある。こうした事態が長期にわたれば、猛暑・厳冬や災害といった需給ひっ迫時に火力発電所を稼働できず、電力不足に陥る可能性もある。
国民負担の増大
送配電事業者がFIT再エネ電力の買い取りに要した費用は、小売電気事業者と需要家が負担する。このうち需要家が負担する費用は再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)として電気料金に転嫁されている。その単価はFIT再エネ電力の買取価格と電力市場価格(回避可能費用)の差※5をもとに決定されるため、市場価格が下がるほど需要家の負担額が増加する傾向にあり、国民の生活を圧迫する可能性がある。
※ 1:https://www.emsc.meti.go.jp/
※ 2:http://jepx.org/
※ 3:https://www.meti.go.jp/
※ 4:事実上限界費用ゼロの電源は、下記①~③が該当する
①長期固定電源(一般水力・地熱・原子力発電)
②固定価格買取制度(FIT制度)によって送配電事業者に買い取られる太陽光・風力発電などの再生可能エネルギー電源
③周波数調整や需要・再エネの想定誤差などの調整に必要な最低限の火力電源
※ 5:https://www.meti.go.jp/
※ 6:https://www.occto.or.jp/
※ 7:https://www.meti.go.jp/
※ 8:https://www.enecho.meti.go.jp/
※ 9:https://www.meti.go.jp/
※10:https://www.mpx-web.jp/ (閲覧日:2020年3月6日)