マンスリーレビュー

2017年6月号トピックス5経済・社会・技術

職場の時短ツールとして期待されるRPA

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2017.6.1

経営コンサルティング事業本部佐々木 康浩

経済・社会・技術

POINT

  • 「働き方改革」の機運の高まりを契機に時短を促すRPAが普及期へ。
  • 部署固有のオフィスワークで効果が実感しやすい。
  • 今後はAIと連携してさらなる自動化を実現。
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とは、インターネットからの情報収集や表計算ソフトでの情報整理といった定型作業をパソコン上で自動化する「ソフトウエアロボット」を指す。企業が全社情報システムを導入する際に、カバーしきれなかった部署固有のオフィスワークを対象として、その業務プロセスを効率化するツールに位置づけられる。人間とロボットの関わり方の違いから、RPAにはフロントオフィス型とバックオフィス型がある(表)。

わが国でも大手金融機関がパソコンを使った業務に本格利用を開始するなど2015年ごろから導入が増えており、政府の長時間労働を是正する動きの中 、時短ツールとしての評価と注目が高まりつつある。

RPAの導入メリットの一つは「即効性」である。RPAは部署主導のもとで短期の導入が可能であり、システムのように入念に導入の準備をする必要はない。さらに、部署で働く従業員の作業に直結するとあって、時短の効果も実感しやすい。

もう一つは「標準化」の効果である。RPAはサーバーとのデータ連携を含めた作業のルールを利用部署が主導して登録でき、現場の実態に沿った指針を設定しやすい。仮に業務経験の浅い初心者がオペレーションに迷ったとしても、運用ルールから逸脱しないようRPAが補助する役割も見込まれる。

マネジメント層のルーティンワークを短縮した事例もある。業務受託サービス大手のトランスコスモスは、コールセンターオペレーターの勤怠管理向けにRPAを導入した。毎朝部下の勤怠を業務システムで逐一確認し、前日の残業時間を表計算シートに人手で集約する管理業務が即座に処理できるようになった。

今後は人工知能(AI)技術を活用して、非定型業務の自動化や例外処理への対応、自然言語処理などより広範な作業をカバーできるようになると想定される。その際でも、期待する効果を得るためには、適用業務の適材適所を見極めて作業や運用のルールを見直すといった現場起点の配慮は不可欠だ。
[表]RPAの種類
  フロントオフィス型ロボット バックオフィス型ロボット
定義 人間の作業と並んで自動的に作業を補助 人間の作業と無関係に無人で作業
特長 企画など戦略的な仕事をしている部署でも定型的な業務があるため、RPAによって各人の数%から数十%分の業務を少しずつ代行することが可能 経理や人事などシェアードサービス向きな部署での流れ作業的な定型業務は、RPAによって数人から数十人分の業務をまとめて置き換えることが可能
一般的な
適応業務
少量の繰り返し作業。人間の判断を適宜必要とする構造化されていない業務 大量の繰り返し作業。人間の判断を必要としない構造化された業務

出所:三菱総合研究所