マンスリーレビュー

2017年6月号デジタル・イノベーション

国家行政にAIを導入するメリット

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2017.6.1

社会ICT事業本部清水 充宏

デジタル・イノベーション

POINT

  • AIは大量処理だけでなく「判断」ができるまでに進化しつつある。
  • 迅速かつ客観的なAIの判断はさまざまな業務に適応が可能。
  • 行政サービスにおける審査業務にもAI活用を。  
 人工知能(AI)の能力は膨大な量のデータを「処理」するだけでなく、「分析」し、「学習」し、「予測」し、「判断」するレベルに達しつつある。実際に金融機関の一部では、与信審査業務にAIを導入する例も見られ始めている。例えば、顧客の年齢や性別、過去の入出金明細などのデータをもとに、AIを使ってその顧客にどの程度までローンを貸し付けることが可能か判断する。人間ではなくAIに任せる利点としては迅速なだけでなく、恣意性を排した判断が可能で、リスクも計測しやすいことが挙げられる。

 AIは、業務の効率化や高度化に加えて、新たなサービス開発やビジネスモデルの革新にも本格的に活用されており、政府も2016年4月の「人工知能技術戦略会議」創設などを通じ、この流れを後押ししている。

 では、行政サービスへの活用はどうなるか。例えば、税務署や年金事務所での徴収・審査の一部をAIに任せてはどうか。毎年、確定申告の時期には税務署に長蛇の列ができる。申告する側も大変だが、職員も対応や書類のチェックに忙殺される。繁忙期には申告手続きを終えてから審査を経て還付金が振り込まれるまで、数週間かかる場合もある。こうした審査にAIの能力を活かせれば、社会的な負荷やコストを軽減できる。

 電子政府を目指して情報システム化を推進してきたため、行政側には膨大な情報が蓄積されており、AI活用に必要なデータをそろえることが可能になりつつある。また、国家公務員の定員数がこの10年で17%減少する中、退職するベテランのノウハウが継承されにくいとの懸念も強い。この対策として、人を支援するAI活用によるメリットが期待される。実際、経済産業省が国会答弁をAIに下書きさせる実証実験を開始している。

 さらに、民間で成功した事例を参考にして、AIと親和性の高い業務を選んで導入すれば、行政サービスの効率化を大きく前進させられるはずだ。また、日々寄せられる膨大な補助金・助成金申請の審査にAIを活用できれば、行政サービスを利用する産業側も、手続きや審査が円滑になり、生産性向上や評価最適化などの好ましい効果が得られるだろう。もちろん最終判断は人が行うことに変わりはない。
[図]AIと親和性が高い国家行政の制度・業務例

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