三菱総合研究所(MRI)は、未来共創イノベーションネットワーク(INCF)が発足したのを機に、社会課題セミナー「オープンイノベーションと社会課題」を開催した。
セミナー前半では、MRI常務研究理事の大石善啓が「MRIが考える社会課題とオープンイノベーション」の研究報告を行った。その後、基調講演として、テクノロジーマネジメントの世界的権威であるマイケル・クスマノ東京理科大学副学長(MITスローン経営大学院教授)から“The Puzzle of Innovation and Entrepreneurship in Japan”と題し、日本のイノベーションと起業の現状と課題をお話しいただき、日本には高い技術力がある反面、ビジネス化するアントレプレナーシップ(起業家精神)に欠けること、またそれを克服するための教育の重要性を指摘いただいた。
後半では、各務茂夫東京大学教授をモデレーターに、「オープンイノベーションで解決する社会課題」と題したパネルディスカッションを開催した。パネラーとして、クスマノ副学長、サンタクララ大学のロバート・エバハート博士、トヨタ自動車の槇祐治常務役員、経済産業省の石井芳明新規事業調整官、MRI常務研究理事の村上清明の5氏がそれぞれの立場から、日本におけるオープンイノベーションの課題や可能性について議論を交わした。オープンイノベーションを支えるエコシステムやアントレプレナーシップ教育の必要性、さらには日本企業の体質やイノベーションに対するアプローチの国内・海外の違いなどに言及があり、示唆に富んだディスカッションとなった。
経済産業省の石井氏によれば、政府はイノベーター育成プログラム「始動Next Innovator」の実施、ファイナンス、マネジメント、R&Dの支援など、経営に深く立ち入ったベンチャー支援活動も行う。MRIとINCFは、こうした動きも意識しながら、イノベーションによる社会課題への取り組みを加速するべく活動を展開していく。
セミナー前半では、MRI常務研究理事の大石善啓が「MRIが考える社会課題とオープンイノベーション」の研究報告を行った。その後、基調講演として、テクノロジーマネジメントの世界的権威であるマイケル・クスマノ東京理科大学副学長(MITスローン経営大学院教授)から“The Puzzle of Innovation and Entrepreneurship in Japan”と題し、日本のイノベーションと起業の現状と課題をお話しいただき、日本には高い技術力がある反面、ビジネス化するアントレプレナーシップ(起業家精神)に欠けること、またそれを克服するための教育の重要性を指摘いただいた。
後半では、各務茂夫東京大学教授をモデレーターに、「オープンイノベーションで解決する社会課題」と題したパネルディスカッションを開催した。パネラーとして、クスマノ副学長、サンタクララ大学のロバート・エバハート博士、トヨタ自動車の槇祐治常務役員、経済産業省の石井芳明新規事業調整官、MRI常務研究理事の村上清明の5氏がそれぞれの立場から、日本におけるオープンイノベーションの課題や可能性について議論を交わした。オープンイノベーションを支えるエコシステムやアントレプレナーシップ教育の必要性、さらには日本企業の体質やイノベーションに対するアプローチの国内・海外の違いなどに言及があり、示唆に富んだディスカッションとなった。
経済産業省の石井氏によれば、政府はイノベーター育成プログラム「始動Next Innovator」の実施、ファイナンス、マネジメント、R&Dの支援など、経営に深く立ち入ったベンチャー支援活動も行う。MRIとINCFは、こうした動きも意識しながら、イノベーションによる社会課題への取り組みを加速するべく活動を展開していく。
イノベーションによる社会課題解決の手法
MRI常務研究理事の大石と村上は、「社会課題」の設定方法やINCFでの取り組み、MRIの役割などを説明した。
オープンイノベーションは、社会課題の解決策の構築に有効な手法だが、それには、課題設定、解決策の構築、社会実装という三つの段階を通じた総合的な取り組みが求められ、MRIの総合的なリサーチ・分析力が有効に機能する。
課題設定のプロセスは、どのような社会を目指すのか(GOALの設定)から始まり、それには現在どのような問題があり、どこから着手すべきか(問題の特定)、それに対しどういう方向から解決を図るのか(課題設定)を明確にするという手順をたどる。INCFでは、国連の設定した「持続可能な開発目標(SDGs)」などを参考に、グローバルおよび日本の社会問題を相互連関的に整理・構造化し、ウェルネス、モビリティー、エネルギー・環境、防災、水・食料、教育の六つの重点分野を指定した。
さらに、これら6分野で顕在化しつつある社会問題を抽出し、適切な対策が打たれなかった場合のインパクトを定量的に分析した。例えば、ウェルネス分野では、急速な高齢化や社会保障費の負担増が続く中、生活習慣病に起因する医療費の増加、認知症・精神疾患による社会コストの増大、地域医療格差などのインパクトが大きく、ビジネスで解決すべき社会問題として選定した。次に、これらの社会問題を解決するために取り組むべき課題を検討し、「予兆把握・予防による健康の維持・増進」「医療・介護サービスの効率的な提供」「高齢者の自立度向上」の三つの課題に絞り込んだ。
解決段階では、イノベーション創出やビジネスモデルの構築に加え、その解決策の有効性を検証する場を確保することが必要であり、MRIの中立性に基づくネットワーク力が役に立つ。ただし、一つの成功モデルができても、それが社会に広く普及されなければ、課題の解決にはならない。さらに制度設計や規制改革など社会システムの変革も必要である。一企業では解決が困難な問題への解決策構築・実装には、複数の企業、行政および研究機関などのコラボレーションの場を提供することも求められる。
MRIは今後、長年培った政策提言力、調整力などの総合力を発揮し、INCFを通じて社会課題の解決に貢献することを目指したい。
オープンイノベーションは、社会課題の解決策の構築に有効な手法だが、それには、課題設定、解決策の構築、社会実装という三つの段階を通じた総合的な取り組みが求められ、MRIの総合的なリサーチ・分析力が有効に機能する。
課題設定のプロセスは、どのような社会を目指すのか(GOALの設定)から始まり、それには現在どのような問題があり、どこから着手すべきか(問題の特定)、それに対しどういう方向から解決を図るのか(課題設定)を明確にするという手順をたどる。INCFでは、国連の設定した「持続可能な開発目標(SDGs)」などを参考に、グローバルおよび日本の社会問題を相互連関的に整理・構造化し、ウェルネス、モビリティー、エネルギー・環境、防災、水・食料、教育の六つの重点分野を指定した。
さらに、これら6分野で顕在化しつつある社会問題を抽出し、適切な対策が打たれなかった場合のインパクトを定量的に分析した。例えば、ウェルネス分野では、急速な高齢化や社会保障費の負担増が続く中、生活習慣病に起因する医療費の増加、認知症・精神疾患による社会コストの増大、地域医療格差などのインパクトが大きく、ビジネスで解決すべき社会問題として選定した。次に、これらの社会問題を解決するために取り組むべき課題を検討し、「予兆把握・予防による健康の維持・増進」「医療・介護サービスの効率的な提供」「高齢者の自立度向上」の三つの課題に絞り込んだ。
解決段階では、イノベーション創出やビジネスモデルの構築に加え、その解決策の有効性を検証する場を確保することが必要であり、MRIの中立性に基づくネットワーク力が役に立つ。ただし、一つの成功モデルができても、それが社会に広く普及されなければ、課題の解決にはならない。さらに制度設計や規制改革など社会システムの変革も必要である。一企業では解決が困難な問題への解決策構築・実装には、複数の企業、行政および研究機関などのコラボレーションの場を提供することも求められる。
MRIは今後、長年培った政策提言力、調整力などの総合力を発揮し、INCFを通じて社会課題の解決に貢献することを目指したい。
[図1]パネルディスカッションの様子