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2018年5月号トピックス3経営コンサルティング

データ品質がIoTの勝負どころ

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2018.5.1

コンサルティング部門 経営イノベーション本部島田 昌典

経営コンサルティング

POINT

  • IoTの広がりは扱うデータの精度に左右される。
  • 究極のデータ品質は、こだわりのものづくりに支えられる。
  • 日本流ものづくりとITの融合が競争力につながる。
すべてのモノがネットにつながるIoT(Internet of Things)が社会に浸透する中、やり取りされるデータも多様化している。家電、自動車、オフィスや生産設備といったモノの稼働や位置に関する状況をリアルタイムで確認できるため、その状況に応じた的確なサービスの提供が増えている。人の活動に対しても、スマートフォンやセンサーを介して情報を把握し、必要なサービスが提供されるようになってきた。

ただ、その対象は、一般的な活動や業務といった、データの精度にそれほどこだわらなくても対応できる領域にとどまっている。緻密かつ高度な判断が要求され、その結果が個人の人生や健康、社会や生活の質に影響を及ぼすリスクがある領域では、一定以上のデータ品質が求められる。

データの品質を高めるには、従来のやり方では困難である。新たな測定方法を開発して実用化しなければならない。公開情報※1に基づいて考察すると、日本にはその端緒と言える実例が存在する。世界で最も精緻に生体データが測定できるウエアラブル製品を開発したミツフジだ。衣服として着用すると、体に密着していないにもかかわらず、正確に心電波形を計測できる。医者が保証する品質水準に達していることで、個人の体調やストレスの管理、疲労検知、発作予知といったニーズへの適用も可能だ。

究極のデータ品質を実現できたポイントは①糸に銀メッキする製造ノウハウ、②職人技による特殊な織り技術、③データ送信とクラウド処理、の三つを組み合わせたことである。もともと西陣織の帯を製造していた同社には、模倣が困難な伝承技術があった。それを活用することで、布が高精度なセンサーとなり、着心地がよく長時間の使用に耐える製品が実現した。質の高いモノが、IoTの新たな次元を切り開いたのだ。

最近はデジタル技術やソフトウエア開発が注目されがちだが、アナログの画期的なものづくりにITを融合させる重要性を再認識しなければならない。データ取得に対する徹底したこだわりと、モノを使う際の心地よさを追求することに裏打ちされた日本流のものづくりこそが、今後進展するIoT社会で競争力を発揮するであろう。

※1:ミツフジのホームページや「Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)」2018年4月号掲載の記事より。

[表]IoTサービスの現状と今後のサービス領域

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